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歯周病は怖くない!? ― たった4つの"S"を理解するだけで

歯周病はとても怖い病気です。
・大切な歯を失うことになります
・全身の様々な臓器に影響を及ぼします(生活習慣病の原因となる慢性炎症巣)
 
でも、もしかしたら、あなたは「私には関係ない・自分は大丈夫」と他人事のように思っていませんか?
 
全人類の共通課題。歯周病の特徴は、4つのSで説明することができます。
 
●歯周病の「4S」とは?
①    Silent disease 『サイレント・ディジーズ』
(silent=静か、disease=病気)
②    Social disease 『ソーシャル・ディジーズ』
(social=社会、disease=病気)
③    Slowly progress 『スローリー・プログレス』
(slowly=ゆっくり、progress=進展)
④    Self controllable 『セルフ・コントローラブル』
(self=自己、controllable=制御可能な)
 
では、ひも解いていきましょう。①の『サイレント・ディジーズ』とは、静かな病気。つまり、ほとんど自覚症状なく進行してしまう病気です。虫歯のように「突然すごく痛い!」なんてことは、ほとんど起こりません。
ほとんど痛みを伴わないからこそ、なかなか病気を自覚することができないのです。そのため多くの人が放置して「あれっ!なんかまずいのかなぁ?」と自覚した時には、ほとんど手遅れ(いつ歯を失ってもおかしくない)という事態になります。知らず知らずのうちにだんだん症状が進んでしまいます。しかも糖尿病、心疾患や脳血管疾患などが発症したとしても、歯周病が原因だと見破られることなく、さらによくない結果を招く恐れがあります(歯周炎の影響でインスリンの働きが阻害されて糖尿病が悪化します・心筋梗塞で亡くなった方を解剖すると心臓から口腔内細菌の塊が見つかります・脳動脈瘤の中からも歯周病の細菌が見つかります)。
 
②の『ソーシャル・ディジーズ』は、社会的な病気。歯周病は決して特殊な病気ではありません。日本人は40代で約80%が、歯周病におかされているというデータがあります。さらに、ギネスブックには「全世界で最も蔓延している病気は歯周病である。地球上を見渡してもこの病気に冒されていない人間は数えるほどしかいない」と記載されています。歯周病は、我々人類全体の問題であって、決して他人事ではありません。それほど普通に誰もがかかってしまう病気なのです。なので、「私は大丈夫」なんて思っている人ほど危険です。
 
だいぶ怖い話になってしまいましたね。③の『スローリー・プログレス』とは、病気の進行がきわめてゆっくりであるということを表しています。すぐには症状が出ないので、なかなか自覚することがありません。
お口のお手入れをおろそかにしていても、20代ではあまり大きな変化はないかもしれません。しかし、30代・40代とお手入れの悪い状態が長く続けば続くほど、歯周病が進行し、歯を支えている骨がなくなり、グラグラして、くさい膿が歯ぐきから滲み出てきます。食事がしづらくなり、やがて歯を失います。当然、その先には全身への弊害も待ち受けています。
 
歯周病は、誰かれかまわず、こっそり忍び寄って来て、じわじわとその勢力を伸ばし、やがては全身に広がっていく、恐ろしい病気であることをしっかりと覚えておいてください。
 
ここまでかなり憂鬱な話になってしまいましたが、希望はあります。④の『セルフ・コントローラブル』とは、歯周病は自分でコントロールできますよ、ということです。毎日、歯のケアをきちんとして、定期的に歯科医院でメインテナンスしていけば、歯周病は予防することができるのです。歯周病は、歯周病原性細菌に起因するバイオフィルム感染症です。ご家庭と歯科医院で、感染症予防対策を計画的に行えば、未然に防げる病気です。
 
「何ともない・痛くない・悪くなってる気がしない」なんて言って放って置くと、いつの間にか取り返しのつかないことになります。ホントです。
しっかりと歯周病予防対策・歯科医院での定期的なメインテナンスを実践するために、歯科医院に予約の連絡をしてください。
 
顕微鏡を使わないと見ることのできない細菌を除去するためには、ご家庭でのお手入れだけでは不十分なので、定期的なプロフェッショナルケアが必要です。
「何ともない・痛くない・悪くなってる気がしない」そんな当たり前の毎日・楽しい毎日を保っていくために、1年間の中のほんの何日かだけは、歯のメインテナンスにために歯科医院に行く時間を作るべきなのです。
 
今すぐ歯科医院に予約の電話を掛けましょう。あなたの歯を守れるのは、あなたの行動だけしかありません。
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ドイツ式入れ歯に関する出版のお知らせ


8月21日に株式会社みらいパブリッシングより本を出版することになりました!
 
タイトルは『入れ歯の悩みが一生消える-ドイツ式テレスコープシステム-』です。
 
本を出版するというのは非常に大変な作業ですね。
自分の経験からドイツ式入れ歯を言語化し、患者さんとの実体験を足し、試行錯誤しながら文章にしていきます。なので、構想から約2年、実際に執筆を始めてから1年半というかなりの時間がかかってしまいました。
 
とにかく文章を書くことに慣れていないため、診療の合間や仕事が終わってからの時間に調べ物をしたり執筆したりするのはとても大変でした。
 
今年は新型コロナの緊急事態宣言によって、学会発表が無くなり、講師を務める予定だったセミナーが延期になりました。そのおかげで、学会発表やセミナーの原稿を作る時間が無くなり、この本に専念することができました。今回の騒動がなければ、まだまだ執筆を終えられていなかったかもしれません。
 
内容は -ドイツ式テレスコープシステム- というと、なんだか難しく、とっつきにくいように感じるかもしれませんが、日ごろから患者さんに説明しているような内容を中心に、さらには治療の実例を交えて、歯の悩みやお口のトラブルの解消につながることを願って、なるべくわかりやすく書きました。
 
読んでみたいと思われたら、ぜひ以下の画像をクリックしてAmazonでお買い求めください。そして感想をお寄せいただけましたらうれしいです。
もっと本の内容を知りたい、あるいは、プレゼントに興味あると思われた方は、こちらからお願いします。(入れ歯の悩みが一生消える〜ドイツ式テレスコープシステム〜/ヨミトク

公式のフェイスブックでも情報を発信しています。
 
よろしくお願いします。


むし歯で死んじゃう!? またまた、むし歯くらいでオーバーな・・・

お口の中は、もともと、様々な種類の細菌がたくさん住んでいるところです。
むし歯は、主にミュータンス菌(Streptococcus mutans)という名前の細菌が原因となります。
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むし歯が進行すると“歯髄”と呼ばれる歯の中の神経や血管が入っている組織にまで、細菌が侵入してしまいます。さらにその先、お口の細菌が歯の内側を通って歯の根の先から体内に入り込み、あごの骨の骨髄炎を起こしたり、血管を介して全身に拡散していくことで敗血症、心内膜炎や様々な病気の原因となったりするのです。
 
新撰組・二番隊隊長 永倉新八の死と虫歯の関係
池田屋事件や鳥羽伏見の戦いなどで活躍し、剣の腕は「一に永倉、二に沖田、三に斎藤」と言われ、新撰組の幹部で幕末の剣士である永倉新八は、、、大正4年(享年77)にお亡くなりになりましたが、、、なんと、虫歯を原因とする骨膜炎、敗血症によって死亡したのです。
 
・・・昔はそういうこともあったかもしれないけど、今はそんな時代じゃないでしょ?と思うかもしれません。しかし、近年でも、
 
18歳女性、むし歯を放置して死亡
これは2年前のイタリアでの出来事です。シチリア島、パレルモの18歳の女性が体の異常を訴え病院に運ばれました。それから1週間後、彼女の容体はさらに悪化し、とうとう息を引き取りました。肺炎と敗血症(多臓器不全に陥ります)を起こしたことが死因となったのですが、そもそもの原因は、長い間虫歯を放置していたことによる歯の炎症によるものでした。
http://www.thelocal.it/20140211/italian-teen-too-broke-to-pay-dentist-dies
 
このように直接的に死と結びつくことは、珍しい出来事かもしれません。しかし、むし歯は『死因』とされないだけで、多くの死に至る病気と関係しています。
 
むし歯や歯周病によってお口の細菌が血管内に入ることを歯原性菌血症と言います。
その歯原性菌血症が原因で『アテロームプラークによる動脈硬化症』や『感染性心内膜症』などが発症することがわかっています。
血管内にプラークが溜まっていって、心筋梗塞や脳梗塞を起こします。
『感染性心内膜症』は心臓の弁に細菌の塊(プラーク)がくっついてしまう病気です。直接、心臓の筋肉に炎症を起こしてダメージを与えてしまいますし、プラークがはがれると血管を詰まらせて脳梗塞を起こしてしまいます。
Iwai, Takehisa. "Periodontal bacteremia and various vascular diseases."Journal of periodontal research 44.6 (2009): 689-694.
Lockhart, Peter B., et al. "Bacteremia associated with toothbrushing and dental extraction." Circulation 117.24 (2008): 3118-3125.
 
日本人の死因の割合の1位から4位である ガン ・ 心疾患 ・ 肺炎 ・ 脳血管疾患は、お口の中の細菌が関係していることがわかってきています。
 
日本でも「痛い」とか「怖い」という理由で虫歯を放置しているという人の話を聞くことがありますが、むし歯の放置は確実にあなたの寿命を短くしてしまうと言えるでしょう。





じつは「命に係わる」病気―歯周病

全身的な健康とお口の健康は密接につながっています
お口の健康状態に気を配らないということは、くさい口臭を放つだけでなく、ガン、心臓病、脳卒中、糖尿病やその他のさまざまな病気になる可能性が高くなります。
oral_health_for_total_health.jpgお口の健康状態が悪いと心臓病を発症するリスクは2倍になります。脳卒中は3倍です。脳への影響でいえば、歯周病と歯の喪失が認知症のリスクを高めます。ガンや糖尿病のリスクも高まります。お口の細菌が口腔ガン・頭頸部ガンの原因になります。それだけではなく、ハーバード大学の研究で、肺ガンは36%、腎臓ガンは49%、すい臓ガンは54%それぞれのガンのリスクが増加するとわかりました。白血病などの血液のガンのリスクも30%増加し、その他ガン全体のリスクが14%高くなります。歯周病の人は糖尿病になるリスクが93%も上昇するという報告もあります。他にも、早産・低体重児出産、肺炎などの呼吸器疾患やEDなど……お口の健康への関心が低いと、本当にさまざまな全身の――深刻で人生を左右するような――病気を引き起こし、悪化させてしまいます。気付かないほどゆっくりと時間をかけて、これまで当たり前だったはずの日常生活を脅かすために忍び寄ります。
 
つまり、歯周病を放置して悪化させてしまうと、、、ガンになりやすい・血管が詰まって脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすい体になってしまいます。それは「命に係わる」ということにほかなりません。
 
病気になってから治療をすることは可能だと思います。しかし、病気の爪痕は確実に残ります。病気になる前の健康的で、なんの煩わしさも感じない、元々の当たり前の状態には決して戻ることはないでしょう。お口から全身の健康を守り、安心した毎日の生活を守るために適切な行動をしていきましょう。






一生、自分の歯で活き活きすごすための簡単なコツ

定期的メンテナンスプログラムの重要性
生涯歯数とメンテナンス.jpg
  • 「定期メンテナンス受診」:定期的に歯科医院でメンテナンスを行っている人は、ほとんど歯を失うことなく、80歳をこえても平均26本の歯が残っています。
  • 「歯磨き指導を受けた人」:ひとたび歯磨きの仕方を習ったからといって、歯科医院でメンテナンスを行わなければ、歯は失われていきます。
  • 「症状のある時だけ受診」:何か症状があった時だけ歯科医院に行く人は、40歳過ぎから徐々に歯を失い始め、80歳ではほとんど無くなってしまいます。

生涯にわたって自分の歯を維持し、十分な栄養を採って、食事を楽しんで、活き活きと日常を送るためには、歯科医院での定期的なメンテナンスが、とっても大切です。
 
生涯を美しい歯きれいな息素敵な笑顔ですごせるように、いつでも全力でサポートします!







江戸時代の健康観と歯

「人は歯をもって命とする故に、歯といふ文字をよわい(齢)ともよむ也」
 
Ekiken Kaibara.jpg
江戸時代に貝原(かいばら)益軒(えきけん)は『日本歳時記』という書物のなかに、このように記しています。貝原益軒という人物は、健康(養生)についての指南書・実用書である『養生訓』の著者で、福岡藩の儒学者であり医者(本草学者)でした。

この「人は歯をもって命とする故に、歯といふ文字をよわい(齢)ともよむ也」という言葉の意味は、『人にとって健康に生きていくためには、歯で食べ物をよく噛むことが何より重要で、だから「齢(よわい)」という字に「歯」が使われている』ということです。
この言葉は、歯は命に直結する大切なものであることを教えてくれています。昔から「よく噛んで食べなさい!」と言われてきたと思います。よく噛んで食べるということが体に良いということは、なんとなくイメージできるのではないでしょうか?
 
どうやら江戸の昔から、よく噛んで食べる生活習慣を身に着け、それを生涯維持していくことこそ、健康長寿の秘訣のようです。
 
さらに『養生訓』では、健康の3要素は運動・栄養・休息である。とし、飲酒の仕方や喫煙の害について説き、口腔衛生の重要性を唱えています。今も昔も変わらず健康の普遍の原理・原則。だけど、今も昔も実践が難しいということでしょうか?(真の健康を手に入れ、維持するための4つの要素参照)
ちなみに、江戸時代の平均寿命は大体40歳くらいといわれています。徳川将軍15名の享年は平均51歳です。貝原益軒は85歳(1630~1714年)。この『養生訓』を出版したのが83歳。亡くなる前年の84歳まで執筆活動を続けました。『養生訓』を自ら実践し(歯のグラつきや欠損もなく)、その生き方で健康長寿を全うする術を証明しています。
 
そんな貝原益軒の有名な格言「知って行わざるは、知らずに同じ」は、誰でも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
さらには「養生の要は、自らあざむくことを戒めて、よく忍ぶにあり」とも言っています。
 
先人の言葉、知恵や教えを生かして、健康な身体で長寿を目指したいですね!








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