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赤ちゃんの口呼吸はいつまで続く?原因と改善方法を徹底解説

赤ちゃんのお口がいつも開いているのが気になる…。そんなお悩みはありませんか?
口呼吸は成長過程で一時的に見られることもありますが、長期間続くと健康や歯並びに影響を及ぼすことも。この記事では、赤ちゃんの口呼吸の原因と改善方法を詳しく解説します。

目次


赤ちゃんの口呼吸とは?


赤ちゃんの口呼吸について、健康に与える影響が気になる方も多いでしょう。赤ちゃんが口呼吸をする原因や、そのメカニズムについて詳しく解説します。

口呼吸の定義とメカニズム

口呼吸とは、鼻ではなく口を使って呼吸する状態を指します。通常、人間は鼻から息を吸うことで、空気を加湿・温め・浄化してから肺に送り込みます。
しかし、口呼吸ではこれらの機能が十分に働かず、乾燥した冷たい空気が直接体内に入るため、健康への影響が懸念されます。
赤ちゃんの場合、口の周りの筋肉や舌の位置が未発達であるため、一時的に口呼吸をすることがありますが、成長とともに自然に鼻呼吸へ移行するのが理想です。

口呼吸がよくみられる時期

赤ちゃんは、生まれた時には口呼吸と鼻呼吸のどちらも定まっておらず、母乳を飲むことで口周りの筋肉が鍛えられ、徐々に鼻呼吸へと移行します。しかし、離乳食開始時期(生後6か月頃)には、口を開けていることが増えることもあります。
通常、この時期は一時的なもので問題はありませんが、口呼吸が長期間続くと、健康への影響が懸念されるため注意が必要です。
歯が生え始めると、哺乳嚥下から成人型嚥下へと移行します。1歳頃には、嚥下と呼吸を同時に行うことができなくなり、この頃までに鼻呼吸の習慣が身についていることが重要です。

赤ちゃんが口呼吸をする原因


赤ちゃんが口呼吸をする原因はさまざまで、鼻づまりやアレルギー性鼻炎、さらには口腔内の筋力不足や姿勢の影響が考えられます。
これらの要因がどのように赤ちゃんの呼吸に影響を与えるのか、そして健康にどんな影響を及ぼす可能性があるのか見ていきましょう。

鼻づまりやアレルギー性鼻炎の可能性

赤ちゃんが口呼吸をする最も一般的な原因の一つが鼻づまりです。風邪やアレルギー性鼻炎によって鼻の通りが悪くなると、呼吸がしづらくなり、自然と口で息をするようになります。
特に、ホコリやペットの毛、花粉などのアレルゲンに敏感な赤ちゃんは、鼻水や鼻詰まりを起こしやすく、慢性的な口呼吸につながることがあります。また、鼻の構造が未発達なために、少しの鼻水でも詰まりやすいことも関係しています.
ただ、口呼吸がアレルギー性鼻炎などの一因となることも考えられ、その場合、どちらが先に現れたのかという順序については議論の余地があるものと考えられます。

口腔内の筋肉の影響

赤ちゃんの舌やお口の周りの筋肉の発達も、口呼吸に影響を与えます。口を閉じるためには、口輪筋(口の周りの筋肉)や舌の筋肉がしっかり機能することが必要ですが、これらが未発達の赤ちゃんは、無意識に口が開きやすくなります。
特に、哺乳の仕方が影響することがあり、母乳や哺乳瓶をしっかり吸うことができていない場合、口周りの筋力が十分に鍛えられないことがあります。結果として、舌の位置が下がり、口が開きやすくなってしまいます。

生活習慣や姿勢の影響

赤ちゃんの姿勢や日常の過ごし方も、口呼吸の原因になることがあります。例えば、猫背の姿勢では肺への空気の通り道が狭くなり、浅い口呼吸をしやすくなります。また、口呼吸が習慣化すると、あごを突き出した前かがみの姿勢になりやすく、さらに口呼吸を助長するという悪循環を引き起こすこともあります。
普段から赤ちゃんの姿勢を意識し、正しい姿勢を保つ習慣を身につけることが大切です。特に食事の際には、椅子の高さを調整し、足がしっかり床についた状態で背筋を伸ばして食べられるようにすることで、正しい呼吸の習慣づけにもつながるでしょう。

赤ちゃんの成長段階と口呼吸


赤ちゃんの成長に伴い、口呼吸の状態は変化します。赤ちゃんの成長段階における口呼吸の特徴と、その影響について解説します。

いつから口呼吸が始まるのか

赤ちゃんは、生まれたばかりの頃は口呼吸と鼻呼吸のどちらも定まっていません。授乳することで舌や口周りの筋肉が鍛えられ、徐々に鼻呼吸が主体になっていきます。
一方で、鼻づまりや筋力不足などの要因で、鼻呼吸への移行が遅れる場合もあります。特に、生後3〜6か月頃は口周りの筋肉が発達する時期であり、この段階で口呼吸の兆候が見られることがありますが、通常は自然と鼻呼吸へ移行するのが理想です。

口を開けて寝る時期

赤ちゃんが寝ているときに口を開けているのを見たことがある親御さんも多いでしょう。生後6か月〜1歳頃は、鼻の通りが狭かったり、風邪やアレルギーで鼻が詰まりやすいため、口を開けて寝ることがあります。
この段階では一時的なものが多いですが、常に口を開けて寝ている場合は注意が必要です。長期間口呼吸が続くと、口周りの筋肉の発達に影響を与えたり、歯並びやあごの成長にも関わってくるため、早めに原因を確認することが大切です。


成長に伴う口呼吸の変化

赤ちゃんの成長とともに、口呼吸の状態も変化します。1歳を過ぎて前歯が生えそろってくると、口を閉じる筋肉が発達し、自然と鼻呼吸ができるようになるのが理想的です。
しかし、2〜3歳になっても口が開いたままの場合は、鼻づまりや口の筋力不足、舌の位置などが影響している可能性があります。
この時期に口呼吸が続くと、歯並びの乱れや、風邪をひきやすくなるリスクがあるため、専門家に相談することを検討しましょう。
前歯が生えそろう頃には、しっかり鼻呼吸ができることが重要です。赤ちゃんの呼吸の様子を観察しながら、必要に応じて環境を整えてあげることが、健康的な成長につながります。

口呼吸がもたらす健康への影響


赤ちゃんの口呼吸が習慣化すると、歯並びや口腔の発達に影響を与えるだけでなく、むし歯や口臭、さらには呼吸器系の疾患にまでつながる可能性があります。ここでは、口呼吸が健康に及ぼす多岐にわたる影響について解説します。

歯並びと口腔の発達

赤ちゃんの成長において、口呼吸が習慣化すると歯並びやお口の発達に影響を与えることがあります。本来、鼻呼吸をしていると舌は上あごに自然と当たるため、上あごの正常な発育を促し、歯並びが整いやすくなります。
しかし、口呼吸が続くと舌の位置が下がり、上あごの発育が不十分になりがちです。その結果、歯並びが乱れやすくなったり、受け口や出っ歯などの噛み合わせの問題が生じることがあります。

むし歯や口臭のリスク

口呼吸をしていると、口の中が乾燥しやすくなります。唾液には細菌を洗い流し、口腔内の環境を整える働きがありますが、口の中が乾いてしまうと細菌が繁殖しやすくなり、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
また、乾燥によって口臭が強くなることもあります。赤ちゃんのうちはそれほど気にならなくても、成長するにつれて口臭の原因になることがあるため、早めに対策を講じることが大切です。


長期的な健康問題

口呼吸が慢性的に続くと、鼻のフィルター機能を通さずに汚れた空気が直接上咽頭、気管支、肺へと侵入し、粘膜をの損傷やアレルギー反応を引き起こしてしまいます。結果としてアレルギー性鼻炎、皮膚炎、アトピー性皮膚炎などのリスクが高まります。
本来、鼻は呼吸器官、口は消化器官であるため、体は口からの空気の侵入を想定しておらず、口呼吸によって異物が直接侵入すると、鼻の防御機構が機能不全に陥っていると認識し、鼻の粘液分泌を増やし、炎症を起こして気道を狭めることで汚れた空気が肺へ到達するのを防ごうとします。
しかし、口呼吸が続く限り汚れた空気は侵入し続け、体はさらに鼻の防御機能を強化しようとするため、やがて慢性鼻炎といった悪循環に陥ります。さらに、鼻呼吸では空気が鼻を通る際に温められ、適度な湿度に調整されますが、口呼吸では冷たく乾燥した空気が直接喉や肺に入るため、気道を覆う粘液層が乾燥して消失し、異物を捕捉できなくなる上、繊毛の機能も低下し、粘膜が損傷しやすくなり、喘息や気管支炎などの呼吸器疾患のリスクを高め、易感染性を招き、感染症にもかかりやすくなります。
赤ちゃんの健康な成長のためには、早期に口呼吸を改善し、正しい呼吸習慣を身につけることが極めて重要です。

赤ちゃんの口呼吸の治し方と予防


赤ちゃんの口呼吸を改善し、予防するためには、まず原因を特定し、的確な対策を講じることが重要です。健康的な呼吸習慣の形成に役立つポイントをお伝えします。

改善するための方法

赤ちゃんの口呼吸を改善するためには、原因を特定し、適切な対策を講じることが重要です。まず、鼻づまりが原因の場合は、鼻の通りをよくすることが優先されます。
加湿器を使用して室内の湿度を適切に保ち、こまめに鼻水を拭き取ることで、鼻呼吸がしややすくなります。また、鼻吸引器を活用し、鼻の通気を確保することも効果的でしょう。
さらに、赤ちゃんの口の周りの筋肉を鍛えることも大切です。口周りの筋力が弱いと、口が開いたままになりやすいため、意識的にトレーニングを取り入れることで改善が期待できます。
赤ちゃんの口周りの筋肉を鍛えるには、母乳や哺乳瓶による適切な授乳が大きな役割を果たします。しっかり吸うことで筋力が鍛えられ、自然と鼻呼吸へ移行しやすくなります。

必要な運動と筋肉の鍛え方

赤ちゃんの口周りの筋肉を鍛えるためには、哺乳瓶やおしゃぶりを活用する方法が有効です。母乳やミルクをしっかり吸うことで、口の周りの筋肉が鍛えられ、自然と口を閉じる力がつきます。
特に、ミルクが出にくいタイプの哺乳瓶を使用すると、より吸う力が必要になり、口腔筋の発達を促すことができます。また、赤ちゃんが自分で口を動かす機会を増やすことも大切です。例えば、おしゃぶりを使うことも口の筋肉を鍛えるのに役立ちます。
ただし、正しい形状のおしゃぶりを使用ないと効果が得られないだけではなく、歯並びに影響する可能性もあるので、おしゃぶり選びは慎重になる必要があります。 おしゃぶりの形状についてはこちらを参照にしてください。
「おしゃぶりは出っ歯になる?出っ歯になりにくいおしゃぶりの選び方を歯科医師が解説します。」

食事や哺乳の工夫

赤ちゃんの食事にも工夫を加えることで、口周りの筋肉をしっかり使う習慣をつけることができます。離乳食が始まったら、さまざまな食材を取り入れることで、噛む力や口の筋肉の発達を自然に促しましょう。例えば、柔らかく煮た野菜を少し大きめに切って与えると、口をしっかり動かす練習になります。
また、食事中の姿勢も口呼吸の予防につながります。椅子に座る際は、背筋を伸ばし、足がしっかり床につくように調整することで、口を閉じて食べる習慣が身につきやすくなります。 赤ちゃんの口呼吸を防ぐためには、日常生活の中で自然に口の筋肉を鍛えることが重要です。適切な対策を取り入れながら、健康的な呼吸習慣を育んでいきましょう。

口呼吸予防のために家庭でできること


赤ちゃんの口呼吸を予防するためには、日常生活の中での小さな工夫が重要です。ここでは、家庭でできる予防策をご紹介し、赤ちゃんの健やかな成長をサポートする方法をお伝えします。

日常生活での正しい姿勢や習慣づくり

赤ちゃんの口呼吸を予防するためには、普段の姿勢や生活習慣を整えることが大切です。例えば、うつぶせ寝や猫背の姿勢が続くと、舌の位置が下がり、口が開きやすくなるため、赤ちゃんが仰向けで寝るようにサポートするとよいでしょう。
また、授乳や食事の際の姿勢も重要です。赤ちゃんがしっかりと背筋を伸ばし、口を閉じた状態で食べることを習慣づけると、自然と鼻呼吸が定着しやすくなります。特に離乳食が始まる時期には、足がしっかり床につくような椅子を使用し、正しい姿勢で食事ができるようにしましょう。

アレルギーや風邪の予防方法

鼻づまりが原因で口呼吸になってしまうことが多いため、アレルギーや風邪の予防も重要なポイントです。 室内の空気を清潔に保つために、こまめに換気をし、加湿器を活用して適度な湿度(50〜60%程度)を保つことが効果的です。また、ホコリやダニが溜まりやすい寝具は定期的に洗濯し、掃除機をかけることでアレルギーのリスクを減らせます。
さらに、赤ちゃんの免疫力を高めるために、バランスの取れた食事や十分な睡眠を心がけることも大切です。特に、ビタミンAやCが豊富な食材(ニンジン、カボチャ、柑橘類など)を取り入れると、鼻や喉の粘膜を健康に保ち、感染症の予防につながります。

お口周りのケアと歯磨きの習慣化

赤ちゃんの口の健康を維持するためには、お口周りのケアや歯磨きを習慣化することが大切です。口呼吸が続くと口の中が乾燥しやすくなり、むし歯や口臭のリスクが高まるため、適切な歯磨き習慣を身につけることが予防につながります。
歯が生え始めたら、ガーゼや赤ちゃん用の歯ブラシで優しくケアをし、歯磨きを嫌がらないように少しずつ慣れさせることが大切です。また、口周りの筋肉を鍛えるために、ストローを使った飲み物を取り入れるのも良い方法です。
日々の生活習慣を整えることで、赤ちゃんが自然に鼻呼吸できる環境をつくり、健康的な成長をサポートしていきましょう。

まとめ

赤ちゃんの口呼吸は、短期間であれば成長過程の一部ですが、長期的に続くと健康に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、鼻づまりやお口の筋肉の未発達が原因となり、歯並びや呼吸器系への影響が懸念されます。 改善するためには、早期の対策が重要です。鼻づまりを解消し、お口の筋力を鍛えることが効果的で、日常生活の中で正しい姿勢や習慣を身につけることが予防にもつながるでしょう。

この記事を書いた人

嶋倉史剛
◆経歴
2000年 明海大学歯学部 卒業
2000年~2006年 明海大学病院歯周病科 勤務
2012年9月 あらやしき歯科医院 開業

◆所属・資格
IPSG包括歯科医療研究会 副会長
明海大学歯周病学分野同門会
日本総合口腔医療学会 口腔総合医認定医 常任理事
オーラルビューティーフード協会 理事
日本医歯薬専門学校非常勤講師
日本顎咬合学会 かみ合わせ認定医

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