入れ歯が合わないと感じた時に知っておきたい原因と対策

「入れ歯が合わない」と感じていませんか？噛み合わせの不調や設計ミスが引き起こす不快感は、食事や会話に支障をきたし、痛みや頭痛を伴うこともあります。しかし、その原因と対策を理解すれば、生活の質を大きく改善することが可能です。
この記事では、入れ歯が合わない原因とその対処法を詳しく解説します。あなたの快適な生活を取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。

目次

入れ歯が合わない原因

「入れ歯が合わない」と感じる原因には、さまざまな要因があります。入れ歯はただ装着すればよいものではなく、しっかりと噛めるように作られていることが重要です。ここでは、入れ歯が合わない主な原因について解説します。

噛み合わせの問題

入れ歯が合わない理由の多くは、噛み合わせにあります。噛み合わせが適切でないと、食事の際に入れ歯がズレたり、特定の歯に過剰な負担がかかるのです。
その結果、痛みや違和感を引き起こすだけでなく、顎関節や咀嚼筋にも影響を与え、肩こりや頭痛につながることもあります。

入れ歯の設計（支持力・維持力・把持力）

入れ歯がしっかりと口の中に収まるためには、支持力・維持力・把持力のバランスが重要です。
●支持力：入れ歯を噛んだときにしっかりと支える力
●維持力：入れ歯が外れにくいようにする力
●把持力：入れ歯が適切な位置に留まる力
特に支持力を意識した設計が不十分だと、噛む力が均等に分散されず、特定の部位に負担がかかりやすくなります。結果として、入れ歯がズレたり、痛みを感じたりする原因になります。

型取りがうまくできていない。技術的な問題・材質の問題

入れ歯は、患者さんの口腔内にピッタリ合うように作られるべきですが、型取り（印象採得）が不十分だと、合わない入れ歯になってしまいます。
また、入れ歯の材質が適していない場合も、フィット感に影響を及ぼします。歯科医院での技術不足や、適切な咬合調整が行われていないことも、入れ歯が合わない原因となるため、慎重な治療が必要でしょう。

入れ歯のお手入れ不足

入れ歯は定期的なお手入れが欠かせません。お手入れを怠ると、入れ歯の表面に汚れが蓄積し、細かい変形や摩耗を引き起こします。
その結果、最初はピッタリと合っていた入れ歯も、時間の経過とともに違和感を覚えるようになるでしょう。

入れ歯が合わないと感じる症状

「入れ歯が合わない」と感じる場合、さまざまな症状が現れることがあります。入れ歯のフィット感は非常に重要で、合わないと食事や会話にも支障をきたします。ここでは、入れ歯が合わないと感じる代表的な症状を詳しく説明します。

痛みを感じる理由

入れ歯が合わない最も一般的な症状は、痛みです。この痛みは、入れ歯がズレることによって引き起こされます。噛む力が均等に分散されず、特定の部位に圧力が集中することで、歯肉や歯茎が痛むことがあります。
また、入れ歯がズレることで粘膜が傷つき、炎症を引き起こすこともあるため、早めに調整を受けることが重要です。

吐き気を引き起こす場合の対処法

入れ歯が合わないと感じることによって、吐き気を引き起こす場合もあります。特に、入れ歯が正しく収まっていないと、舌と入れ歯の間に不快感が生じ、これが吐き気につながることがあります。
この場合、入れ歯のサイズが合わず、舌を圧迫している可能性が考えられます。

頭痛などの症状

入れ歯が合わないと、噛み合わせに問題が生じることがあります。噛み合わせのズレが続くと、顎の筋肉が緊張し、肩こりや頭痛といった全身的な症状を引き起こすことがあります。
特に、噛み合わせが不安定だと、顎関節に過剰な負担がかかり、頭痛を引き起こす原因となることもあります。こうした症状は、入れ歯が不調和を生じているサインであり、早期の調整や再製作が必要でしょう。

入れ歯が合わない時の症状と影響

入れ歯が合わないと、さまざまな症状や影響が日常生活に現れることがあります。これらの症状は、単なる不快感にとどまらず、生活の質に大きく影響を与える可能性があるのです。ここでは、入れ歯が合わないことによる主な症状とその影響について説明します。

痛みや違和感による日常生活への影響

入れ歯が合わないと、痛みや違和感が強くなり、日常生活に支障をきたすことがあります。噛む際に痛みを感じたり、入れ歯がズレたりすると、食事を楽しむことができなくなります。
さらに、会話の際にも違和感が生じ、言葉を発しにくくなるでしょう。このような不快感が続けば、精神的なストレスが溜まり、生活の質が低下する原因となるのです。

食事中の吐き気や発音の問題

入れ歯が合わないと、食事中に吐き気を感じることがあります。特に、入れ歯が舌や上顎に触れている場合、ベロの動きに干渉して吐き気を引き起こすことがあります。
また、発音にも影響が出ることがあります。入れ歯が安定せず、舌を正しく動かせないため、言葉がうまく発音できず、会話に困る場合もあるでしょう。このような症状は、入れ歯が合わないことによる不快感をさらに悪化させます。

肩こりや頭痛などの全身的な症状

入れ歯が合わないことで、噛み合わせが乱れることがあります。噛み合わせのズレが続くと、顎や首、肩の筋肉に過度な負担がかかり、肩こりや頭痛などの全身的な症状を引き起こす可能性が高いです。
特に、顎関節にかかるストレスが強くなると、首や肩の筋肉が緊張し、慢性的な痛みを感じることもあります。このような症状が続けば、入れ歯が合わないことが原因である可能性が高いでしょう。そのため、早期に歯科医に相談することが非常に重要です。

入れ歯の合わないときの対処方法

入れ歯が合わないと感じたとき、どのように対処すべきでしょうか。入れ歯は長期間使用するものなので、適切な対応を取ることが重要です。
ここでは、入れ歯が合わないときの一時的な対処法や作り直し時の注意点、歯科医院を訪れるべきタイミングについてご説明します。

一時的な対象方法

入れ歯が合わない場合は、一時的に入れ歯を外して生活することが推奨されます。無理に入れ歯を使い続けると、痛みや違和感がさらに悪化することがあります。食事や会話の際に不便を感じるかもしれませんが、入れ歯を外すことで、口内の負担を軽減できます。
しかし、これはあくまで一時的な対応に過ぎません。症状が続く場合は、速やかに専門的な治療を受けることが重要です。

作り直し時の注意点

入れ歯の合わない原因が設計の不具合や噛み合わせの問題である場合、作り直しが必要です。新たに入れ歯を作り直す際には、単に歯を埋めるだけでなく、全体のバランスを見て設計することが重要です。
これは、入れ歯が快適に使用できるようにするために欠かせないポイントです。包括的な歯科治療を行い、口腔内全体を考慮した設計をすることで、噛み合わせの問題や違和感を最小限に抑えることができます。

どのタイミングで歯科医院を訪れるべきか

入れ歯に慣れるまでは、数週間〜1カ月の時間を要することが多いです。1ヶ月以上使用し続けても改善しない場合や、痛みが強くなった場合は、歯科医院を訪れるべきでしょう。
適切な時期に対応することで、症状が悪化する前に適切な調整が可能となり、より快適な入れ歯に近づけることができます。

入れ歯に関するよくある疑問

入れ歯が合わないと感じた場合、どの診療方法を選ぶかは非常に重要です。自費診療と保険診療にはそれぞれ特徴があり、それが入れ歯の治療にどのように影響するのかを理解しておくことが大切です。

自費診療と保険診療の違い

入れ歯の治療において、自費診療と保険診療の最も大きな違いは「噛み合わせの検査」と「入れ歯の設計」にあります。保険診療では、治療費を抑えることができる反面、噛み合わせの検査や調整が不十分になることがあります。
これに対して自費診療では、より精密な検査が行われ、患者さん一人ひとりに合った噛み合わせの調整が可能です。自費診療では、細かい部分まで配慮された入れ歯作成が可能なため、より快適な使い心地を得ることができるでしょう。

治療にかかる時間と費用は？

入れ歯治療にかかる期間と費用は、選択する治療方法や使用する素材によって大きく異なります。
保険適用の入れ歯の場合 ●部分入れ歯：数千円〜1万円程度
●総入れ歯：約1万円
●治療期間：1〜2か月程度（型取りから完成まで）

自費診療の入れ歯の場合（※テレスコープ義歯の場合）
●上下いずれか片側の費用：約20万〜30万円
●土台の冠費用：1本あたり約10万〜30万円
●総額：4本の冠をかぶせる場合、総額100万円以上
●治療期間：約6カ月（治療内容により異なる）
また、デンタルローンを利用すれば、費用を分割払いで負担することができるため、経済的な負担を軽減できます。

入れ歯のメンテナンス方法

入れ歯は定期的にメンテナンスを行うことで、長持ちし、快適な使用が可能になります。しかし、入れ歯が合わないと感じたとき、または使用感に違和感を覚えたときは、早急に調整が必要です。
以下では、入れ歯のメンテナンス方法について詳しく解説します。

汚れの取り方と重要性

入れ歯は日々の使用で汚れや細菌が付着するため、毎日のブラシでの洗浄が欠かせません。汚れが溜まると、入れ歯が合わない状態につながることがあるため、食後や寝る前には必ず洗浄しましょう。
また、入れ歯を洗う際には、硬いブラシを使用せず、やわらかい専用のブラシを使うことをお勧めします。洗浄剤を使うことで、歯垢や細菌を効果的に取り除くことができますが、刺激が強すぎるものは避けるようにしましょう。

入れ歯の素材選びとその影響

入れ歯を作る際の素材選びも、快適さに大きく影響します。例えば、金属のフレームを使用した入れ歯は耐久性が高いですが、重さや口腔内の違和感を感じやすいことがあります。
反対に、プラスチックや樹脂製の入れ歯は軽量で柔軟性がありますが、摩耗が早くなることがあるため、定期的に調整が必要です。
もし入れ歯が合わないと感じた場合、素材や形状の変更を検討することも一つの方法です。適切な素材を選ぶことで、より快適に過ごすことができます。

口腔健康維持のためのポイント

入れ歯が合わない原因として、口腔内の環境の変化も挙げられます。歯茎が縮んだり、骨の形が変わることで、以前はフィットしていた入れ歯が合わなくなることがあります。定期的に歯科医院を訪れ、調整を行うことが重要です。
また、口腔内を清潔に保つためには、入れ歯だけでなく、残っている歯や歯茎の健康も考慮する必要があります。適切な口腔ケアを行い、入れ歯が合わないという問題を最小限に抑えることが、健康維持には欠かせません。

入れ歯のメリットとデメリット

入れ歯は失った歯を補うための重要な治療法ですが、使用にあたってはメリットとデメリットがあります。次の点を押さえ、入れ歯のメリット・デメリットを理解して自分に合った選択をしていきましょう。

入れ歯の利点を知ろう

入れ歯の最大の利点は、手軽に失った歯の機能を回復できる点です。入れ歯は、部分的なものから全体的なものまで種類があり、費用面でも他の治療法に比べて比較的抑えられる場合が多いです。
また、治療期間も比較的短いため、早急に噛む機能を回復したい場合に適しています。さらに、調整や修理も比較的容易で、急に入れ歯が合わないと感じても、歯科医による調整で迅速に対応できる点もメリットでしょう。

ブリッジとの比較

ブリッジは、隣接する歯を支えにして失った歯を補う治療法ですが、入れ歯と比べてその設置に隣接する健康な歯を削る必要があります。もし入れ歯が合わないと感じた場合、ブリッジの調整も難しくなることがあります。
また、ブリッジは固定されているため、取り外しできない点が不便に感じることもあります。一方、入れ歯は取り外し可能であるため、清掃がしやすく、口腔内を清潔に保つことができます。

インプラントとの比較

インプラントは、歯根を人工的に埋め込んで歯を補う治療法で、入れ歯やブリッジに比べて安定性が高いのが特徴です。しかし、インプラント治療は手術を伴い、費用も高額となるため、選択には慎重さが求められます。 さらに、インプラント特有のリスクとして周囲粘膜炎やインプラント周囲炎があります。これらは、インプラントを埋入しなければ生じることのない疾患であり、インプラント周囲の粘膜や骨に炎症が起こる可能性があります。
放置すると、骨の吸収やインプラントの脱落につながる恐れがあるため、インプラント治療には、こうした新たな病気のリスクが伴うことを理解しておく必要があります。そのため、治療後も定期的なメンテナンスが欠かせません。
もし入れ歯が合わない場合、インプラントを検討することも一つの選択肢となりますが、入れ歯と比べて期間が長くかかる点も考慮する必要があります。

まとめ

入れ歯が合わないと感じる原因は、噛み合わせや設計の不備、型取りの誤差などさまざまです。入れ歯が合わないと痛みや違和感、さらには吐き気や頭痛を引き起こすこともあります。
費用や精神的な負担を考慮しても、噛み合わせをしっかり維持できる入れ歯を作ることは、長期的に快適な生活を支えるために欠かせません。
最も重要なのは、噛み合わせをしっかり維持し、個別に合った設計をすることです。定期的な調整とメンテナンスを行うことで、快適な使用感を維持でき、入れ歯が合わない問題を解決できます。入れ歯が合わないと感じた際には、迅速に専門家に相談し、問題の拡大を防ぐことが鍵です。

この記事を書いた人

嶋倉史剛
◆経歴
2000年 明海大学歯学部　卒業
2000年～2006年 明海大学病院歯周病科　勤務
2012年9月 あらやしき歯科医院　開業

◆所属・資格
IPSG包括歯科医療研究会　副会長
明海大学歯周病学分野同門会
日本総合口腔医療学会　口腔総合医認定医　常任理事
オーラルビューティーフード協会　理事
日本医歯薬専門学校非常勤講師
日本顎咬合学会　かみ合わせ認定医