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歯周病の原因菌とその対策方法を徹底解説します

歯周病の原因を深く理解し、効果的な対策をすることは、口腔内だけでなく全身の健康を維持するうえで極めて重要です。本稿では、歯周病の主な原因菌や発症のメカニズムを紐解きながら、予防と治療の要点について詳説します。
健康的な笑顔を長く保つための確かな知識を身につけ、歯周病対策の第一歩を踏み出しましょう。

目次


歯周病の原因とは何か


歯周病は、歯ぐきや歯を支える組織に起こる炎症性疾患で、原因となる細菌やその毒素が歯周組織を破壊します。ここでは、歯周病の主な原因菌とその特性、さらに発症メカニズムについて解説します。

歯周病の主な原因菌とその特徴

歯周病は主としてプラーク内に潜む特定の細菌群、いわゆる歯周病原因菌の感染によって引き起こされます。この細菌は歯ぐきに炎症をもたらし、組織を徐々に破壊します。以下は代表的な歯周病原因菌です。 代表的な歯周病原因菌は以下の3種類です。

●ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)
●トレポネーマ・デンティコーラ(Treponema denticola)
●タンネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)

これらの細菌は、毒素を産生し、歯ぐきに炎症を引き起こすだけでなく、歯周組織を破壊する歯周病の原因菌です。これにより、歯周病が進行し、最終的には歯の喪失を招くこともあります。
お口の中には、多種多様な細菌が共存していますが、その中で「善玉菌」と「悪玉菌(歯周病菌など)」のバランスが重要です。
健康な状態では、善玉菌が優位ですが、不適切な口腔ケアや不規則な生活習慣によりこのバランスが崩れると、善玉菌が減少し、歯周病菌が優勢となり、歯周病が発症・進行します。

プラークと歯垢の影響

プラークは、細菌の集合体であり、歯面に付着してバイオフィルムを形成します。このプラークが硬化すると歯石となり、さらに細菌の繁殖を助けます。これが炎症を引き起こし、歯周病が進行する原因となります。

歯周病菌の感染経路と進行

す。これは歯周病に類似した感染症で、適切な管理を怠ると、最終的にはインプラントの脱落を招く恐れがある疾患です。

歯周病と生活習慣の深い関係

歯周病の発症や進行には、生活習慣が密接に関連しています。糖質中心の食事や不適切なブラッシングはプラークの蓄積を助長し、歯周病菌が温床する原因を作り出すのです。
また、睡眠不足や慢性的なストレスは免疫力を著しく低下させ、細菌感染への抵抗力を弱める原因となります。健全な生活習慣の維持が、歯周病予防の重要な鍵といえるでしょう。

親と子の相関関係について

親から子への細菌感染も歯周病の原因となることがあります。例えば、口移しやキスといった行為を介して、親が持つ細菌が子供のお口の中に移行するケースが一般的です。このような感染経路は、将来的な歯周病リスクを高める要因となります。

歯周病の症状を見極めるポイントと進行段階


歯周病は初期段階では無症状であることが多いため、早期発見が予後を大きく左右します。ここでは、歯周病の進行段階ごとの特徴やセルフチェック法を解説します。

初期症状と悪化のサイン

初期の歯周病は、歯ぐきの赤みや軽い腫れといった症状から始まります。歯周病が進行すると歯ぐきの痛みや出血、さらには歯の動揺へと至る恐れのある疾患です。 h3見た目や触感でわかる歯周病のチェック方法 ご自身で歯ぐきの状態を確認するためのチェックポイントは以下の通りです。

●歯ぐきに赤みやぶよぶよ感、腫れ感が見られる
●歯ぐきを軽く押した際や歯磨き時に出血しやすい
●歯ぐきから膿のようなものが排出される
●口臭が強く感じられる

これらの症状に気づいた場合は、歯周病が疑われます。できるだけ早めの受診が推奨されるでしょう。

軽度の歯周病と進行した歯周病の違い

軽度の歯周病では、炎症は歯ぐきの表層に留まり、適切なケアで回復が可能です。しかし、進行すると炎症が歯槽骨にまで及び、歯を支える組織が破壊されていきます。
中度の歯周病に進行すると、歯ぐきの腫れや出血に加え、歯周ポケットの深部で膿が溜まることがあります。
さらに重度になると、歯のぐらつきが顕著になり、歯槽骨の吸収が進行します。最終的には歯が自然に脱落するリスクも高まるでしょう。適切な歯周病治療を受けることで進行を食い止めることが非常に重要です。

歯周病と全身の健康


歯周病は口腔内だけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼします。歯ぐきから血液に細菌が入り込み、さまざまな疾患の原因になると考えられています。
実際に体内の病変部位から歯周病菌が検出されるケースも報告されています。この点を踏まえ、全身の健康管理にも気を配ることが重要です。

糖尿病との関連性

歯周病と糖尿病は、相互に影響を及ぼし合う関係にあります。
糖尿病患者は免疫力が低下し、歯周病にかかりやすくなります。一方で、歯周病が悪化すると、歯周ポケットから放出される炎症関連物質が血糖値の管理を難しくし、糖尿病の症状をさらに悪化させる可能性があります。
このため、歯周病の治療と糖尿病の管理は、両者を共に考慮したケアが必要です。

認知症との関連性

近年の研究では、歯周病菌が脳内に侵入し、アルツハイマー型認知症のリスクを高める可能性が指摘されています。
歯周病によって放出される菌やその毒素が血流を通じて体内を巡り、脳に到達することでアミロイドβやタウたんぱくが異常に蓄積され、認知機能に悪影響を及ぼすことが確認されています。
特に、慢性歯周病患者は、歯周病のない人と比べてアルツハイマー病の発症リスクが約1.7倍高いとされており、放置すれば深刻な健康被害を招く恐れがあります。早期の歯周病治療が認知症予防の一助となるでしょう。

心臓病リスクとの関係

歯周病菌は歯ぐきから血管を通じて体内に広がり、心臓にも悪影響を与える可能性があります。血管内に侵入した菌は血管壁に炎症を引き起こし、その炎症が動脈硬化を進行させます。これにより、狭心症や心筋梗塞のリスクが高まります。
実際、動脈硬化の部分からは肺炎クラミジアとともに歯周病菌が多く発見されており、これが心臓病発症に寄与していることがわかっています。

妊娠における影響

妊娠中に歯周病があると、低体重児や早産のリスクを増加させる可能性があります。妊娠中はホルモンバランスの変化により、妊娠中は歯ぐきが炎症を起こしやすく、特に歯周病が悪化しやすい時期です。

関節リュウマチとの関連性

歯周病菌が関節リウマチの進行に関与していることが明らかになりつつあります。特に歯周病菌の1つであるポルフィロモナス・ジンジバリスは、体内のアルギニンをシトルリンに変化させ、これが抗CCP抗体の生成を引き起こします。
この抗体が関節に炎症を誘発し、関節リウマチの発症リスクを高めるのです。また、関節リウマチ患者は、治療薬による免疫低下やシェーグレン症候群の影響で歯周病になりやすいです。
さらに、関節の痛みや機能障害により適切な口腔ケアが困難となるため、歯周病と関節リウマチが相互に影響し合い、悪循環に陥りやすくなります。

歯周病の悪化要因


不衛生な口腔環境が歯周病悪化の大きな原因となることは勿論ですが、ほかにも以下のような原因で歯周病が悪化します。

喫煙とストレスの影響

喫煙は、歯周病の進行を加速させる主要な原因の一つです。タバコの有害物質は、歯ぐきへの血流を減少させ、組織の修復能力を低下させます。
また、ストレスは免疫力を低下させ、歯周病菌に対する抵抗力を弱めることが知られています。

歯ぎしりのリスク

歯ぎしりや食いしばりは、歯周組織に過度な負担をかけ、歯周病の進行を助長します。特に、不適切な噛み合わせは歯肉への局所的なダメージを引き起こし、炎症を悪化させる要因となります。
さらに、不衛生な口腔環境と噛み合わせの乱れが相まって歯周病を深刻化させることも少なくありません。

免疫力の低下と歯周病

加齢や病気による免疫力の低下は、歯周病のリスクを高めます。特に、高齢者や慢性疾患を持つ人は、歯周病菌に感染しやすくなります。

歯周病の治療法とそのプロセス


歯科医師・衛生士が行うプロフェッショナルケアとは

歯周病治療は、歯科医師や歯科衛生士による専門的なケアから始まります。まず、歯石やプラークの徹底的な除去を行い、歯周ポケット内の細菌を排除して炎症を鎮めます。
初期段階では非外科的なクリーニングが中心となりますが、進行した歯周病では、歯周組織を再生させるための外科的処置が必要になる場合もあります。

治療にかかる期間と治療後の管理方法

歯周病治療には、症状の進行度や患者個人の口腔環境によって異なりますが、通常数週間から数か月を要します。治療終了後も、再発を防ぐためには定期的なプロフェッショナルケアが欠かせません。
同時に、患者自身が毎日のセルフケアを徹底することが求められます。この二人三脚の取り組みが、健康な口腔環境の維持と全身の健康向上に寄与するのです。

自分でできる歯周病ケア


歯周病予防には、毎日の正しいセルフケアが欠かせません。健康な口腔環境を保てる歯周病のケアについてお伝えします。

正しい歯磨き方法

歯周病を予防するためには、まず正しい歯磨きが基本です。歯ブラシは歯と歯ぐきの境目に対して45度の角度で当て、優しく小刻みに動かすのが理想的です。
また、歯ブラシだけではお口の汚れが60%程度しか取り切れないため、歯間ブラシやフロスなどの補助用具を使うことで、より効果的に歯垢を除去できます。

定期的な歯科検診の重要性

歯周病は初期段階では症状がほとんど現れません。そのため、定期的な歯科検診を受けることが重要です。専門的なケアを受けることで、病気の早期発見と予防が可能となるでしょう。

口腔ケア習慣化

歯周病ケアで最も大切なのは、口腔内の細菌をコントロールすることです。良い細菌を増やし、歯周病の原因となる有害な細菌を減らすことが、健康な口腔環境を維持する秘訣です。

歯周病を予防する方法


歯周病の予防には、日々のケアが欠かせません。さらに、噛み合わせの状態も歯周病に大きな影響を与えるため、総合的なアプローチが求められます。以下の方法を実践し、歯周病を予防していきましょう。


プラーク除去のテクニック

歯周病予防の最も基本的かつ重要なステップは、プラーク(歯垢)を徹底的に取り除くことです。先に述べた「正しい歯磨き方法」において紹介したブラッシング法を実践し、歯周病菌が繁殖する余地を与えないよう心掛けましょう。

健康的な食生活

歯周病のリスクを減少させるためには、食生活の見直しが欠かせません。特にカルシウムやビタミンCを豊富に含む食品を積極的に摂取し、歯ぐきの健康をサポートしましょう。
同時に、糖分や酸性食品の摂取を控えることで、歯周病菌の増殖を抑え、健康な口腔環境を維持することが可能になります。

生活習慣の見直し

歯周病の予防には、歯磨きだけでなく、食生活や睡眠の質、ストレス管理など、生活習慣の見直しも欠かせません。食後の歯磨きや間食の頻度を適切に管理すること、十分な睡眠を確保し免疫力を高めることが、歯ぐきの健康維持に欠かせません。

それって本当に歯周病?歯周病に似た症状


歯周病に似た症状を示す疾患は他にもいくつかあります。歯のぐらつきや欠如もその一例で、かみ合わせの問題が原因である場合もあり、歯周病と間違えられることがあります。 それらは一見すると歯周病と区別がつきにくいことがありますが、早期に正しい診断を受けることが重要です。ここでは、歯周病と似た症状を持ついくつかの疾患について解説します。

根尖性周囲炎

根尖性周囲炎は、歯の根の先端付近に炎症が生じる疾患で、歯の神経が感染して膿が溜まることが原因です。
歯周病と似て、歯ぐきが腫れて痛みを伴うことがありますが、根尖性周囲炎の場合、歯の根に問題があるため、治療方法は異なります。治療には歯の根管治療が必要となることが一般的です。

歯冠周囲炎(智歯周囲炎)

親知らずが生えかけている部分に炎症が起きることで発生する歯冠周囲炎は、歯ぐきの腫れや痛みを引き起こします。
この症状は、歯周病と似ているものの、主に智歯の周囲に発生するため、歯ぐきの腫れが特定の部位に限られるのが特徴です。智歯を抜歯することで症状が改善されることが多いです。

歯肉増殖症

歯肉増殖症は、歯ぐきが異常に増殖する疾患で、歯周病と似た症状が現れることがあります。
歯肉が腫れて赤くなるため、歯周病と間違われやすいですが、歯肉増殖症はホルモンの変化や薬剤の副作用が原因であることが多いです。治療には、原因に応じた対処が求められます。

エプーリス

エプーリスは、歯ぐきにできる良性の腫瘍で、腫れや出血を伴うことがあります。歯周病と似た症状を示しますが、エプーリスは歯ぐきの表面に腫瘍ができることが特徴です。

歯周病に間違われてた事例

ある患者様は、10年近く歯周病の治療を続け、多くの歯を失い、さらにインプラント治療も繰り返していました。しかし、症状はなかなか改善せず、インプラント治療の継続にも不安を感じて、当院へドイツ式入れ歯についてのご相談に来院されました。
精密検査の結果、歯周病の兆候は見られず、原因は噛み合わせの不良によるものでした。噛み合わせのズレが特定の歯に過度な負担をかけ、歯が動揺していたのです。この状態が歯周病と誤解され、治療方針が長期にわたり変わらなかったと考えられます。
当院では噛み合わせを調整し、歯にかかる負担を軽減する治療を行った結果、歯のぐらつきは改善し、患者様は長年の悩みから解放されました。

まとめ

歯周病は放置すると進行し、最終的には歯を失うリスクも高まります。しかし、原因を正しく理解し、適切なケアを実践することで予防・改善が可能です。
日々の口腔ケアを徹底し、定期的に歯科検診を受けることが重要です。本記事で紹介した原因菌や生活習慣との関連性を見直し、健康な歯ぐきを守りましょう!

この記事を書いた人

嶋倉史剛
◆経歴
2000年 明海大学歯学部 卒業
2000年~2006年 明海大学病院歯周病科 勤務
2012年9月 あらやしき歯科医院 開業

◆所属・資格
IPSG包括歯科医療研究会 副会長
明海大学歯周病学分野同門会
日本総合口腔医療学会 口腔総合医認定医 常任理事
オーラルビューティーフード協会 理事
日本医歯薬専門学校非常勤講師
日本顎咬合学会 かみ合わせ認定医

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