歯科について詳しく知りたい方へ

奥歯から首にかけて痛い場合の原因と対処法。原因別の受診科目も解説します

「奥歯から首にかけて痛い」。その放散痛は、虫歯から副鼻腔炎、さらには噛み合わせの不調に至るまで、思わぬ疾患の警鐘かもしれません。

原因を特定せずに鎮痛剤でやり過ごすと、炎症や神経の圧迫が進行し、深刻な全身トラブルに発展するリスクもあります。

本稿では、痛みの連鎖を断ち切るための的確な受診先と、その見極め方までわかりやすく解説します。

目次


奥歯から首にかけて痛い原因(歯や口腔内の問題)


「奥歯から首にかけて痛い」「奥歯の奥がズキッとして首筋までじわじわ響く」——そんな症状の起点は、たいていお口の中に潜んでいます。

とりわけ奥歯で起きた異変は、咀嚼筋や三叉神経経路を介し、こめかみ・耳下・後頸部へと連動しやすいもの。ここでは歯科領域でありがち4なつの原因を整理しておきましょう。

虫歯や歯周病

虫歯が進行して歯髄(神経)まで達すると、強い痛みを引き起こすことがあります。特に奥歯は噛む力が強くかかるため、痛みを感じやすく、炎症が広がると周囲の歯肉や顎骨にまで波及し、首の痛みとして認識されることもあります。

また、歯周病によって歯肉や歯槽骨に炎症が生じると、そこに隣接する筋肉やリンパ節が刺激され、鈍い痛みや違和感が頬や首に伝わることもあります。

歯科疾患は局所の問題にとどまらず、隣接組織との連動性をもって症状が拡大するため、虫歯や歯周病の放置は禁物です。

親知らずの炎症

親知らず(第三大臼歯)は奥歯のさらに奥に位置し、まっすぐに生えてこないことが多く、歯ぐきの腫れや細菌感染を起こしやすい歯です。炎症が顎の深部や咀嚼筋へ広がると、口の開閉時に痛みを感じたり、首の後ろやリンパ節のあたりに鈍痛や熱感を伴うこともあります。

特に下顎の親知らずが炎症を起こすと、顎下腺や顎関節に近接しているため、痛みの範囲が首筋や耳下あたりまで拡大しやすくなります。

上顎洞炎

上顎洞炎(副鼻腔炎)は、上顎の奥にある空洞に炎症が起こる状態です。上の奥歯の根は上顎洞と非常に近接しており、歯の感染が原因で上顎洞炎を引き起こすこともあります。

この場合、上の奥歯を押すと痛みが出たり、顔面やこめかみ、さらには首にかけて鈍い痛みを感じることもあります。鼻づまりや膿性の鼻水などが同時に現れることもあるため、歯科と耳鼻科の両方での対応が必要になることがあります。

噛み合わせの問題(顎関節症)

噛み合わせの不調や顎関節症も、奥歯から首への痛みの一因です。理想的な噛み合わせでは、すべての歯が均等に接触しますが、奥歯が早期に当たるとその歯に過度な負担がかかり、痛みや違和感を生じやすくなります。

加えて、こうした不均衡は顎の関節や咀嚼筋にストレスを与え、筋肉の過緊張や顎関節の炎症につながります。結果として、首の筋肉まで影響が及び、これが痛みとして感じることもあるのです。

奥歯から首にかけてい痛い原因(その他の問題)


「奥歯から首にかけて痛い」と感じるとき、その原因は必ずしも歯や口腔内の問題だけとは限りません。神経やリンパ、さらには精神的なストレスなどが複合的に影響している場合もあります。

ここでは、歯科以外の視点から考えられる要因について整理しておきましょう。

神経痛

奥歯のあたりにズキズキとした痛みを感じていても、実際には神経の障害が発端となっていることがあります。特に三叉神経痛は、顔面・上顎・下顎を含む広い範囲にビリビリと電撃のような痛みを生じさせ、奥歯から首にかけて痛いという自覚につながることがあります。

このような神経性の痛みは、時に後頭部や耳まわり、肩まで放散することがあり、歯そのものに異常が見られない場合には、神経内科やペインクリニックでの診察が必要になるかもしれません。

リンパ節の腫れ

首には免疫系を担う複数のリンパ節が存在し、風邪・扁桃炎・口内炎・虫歯など、体内の炎症がトリガーとなってリンパ節が腫れることがあります。特に奥歯に近い顎下リンパ節が反応を起こすと、まるで奥歯が痛んでいるかのような違和感が生じ、奥歯から首にかけて痛いという状態へとつながります。

リンパ節が原因である場合、首元を触るとしこりのような腫れを感じることがあり、左右どちらか一方に症状が集中するのも特徴のひとつです。

ストレス

一見無関係に思える精神的ストレスも、奥歯から首にかけて痛い原因として軽視できません。強いストレスや緊張状態が続くと、無意識に歯を食いしばったり、就寝中に歯ぎしりをするようになります。

こうした習慣は、顎関節や咀嚼筋に過度な負担をかけ、筋肉の緊張や炎症を引き起こします。結果として、奥歯や首筋に痛みやこりが現れるのです。

ストレス由来の症状は、心身両面からのアプローチが必要なため、必要に応じてカウンセリングなど、心身両面からのケアが効果的とされています。
 

虫歯や歯周病との関連性


奥歯から首にかけて痛いと感じる場合、その根本に虫歯や歯周病といった口腔内の疾患が潜んでいることがあります。特に炎症が進行した場合、口腔内の限られた部位にとどまらず、顔面や首の広範囲にまで痛みが波及することがあるため注意が必要です。

以下では、それぞれの疾患がどのようにして奥歯から首にかけて痛い症状を引き起こすのかを見ていきましょう。

虫歯が引き起こす痛みのメカニズム

虫歯とは、口腔内の細菌が歯の表層にあるエナメル質を溶かし、象牙質、さらには歯髄(神経)まで侵食していく疾患です。特に進行した虫歯では、歯髄炎や根尖性歯周炎といった深刻な状態を招き、拍動するような鋭い痛みが特徴となります。

このような痛みは奥歯の位置によっては、耳の奥や側頭部、さらには首筋にまで広がることがあり、奥歯から首にかけて痛いと誤認されやすいのが特徴です。

歯周病による炎症の影響

歯周病は、歯肉や歯槽骨といった歯の支持組織が細菌によって侵されていく慢性の炎症性疾患です。歯ぐきの腫れや出血といった表面的な症状に加えて、炎症が深部に達すると、顎の骨や歯根膜まで痛みを生じさせることもあります。

特に重度の歯周病では、炎症によって顎下リンパ節が腫れ、奥歯から首にかけて痛いといった違和感を誘発することも。

また、歯周病から誘発された噛みにくさや咀嚼のアンバランスが生じると、筋肉が過剰に働くようになり、肩や首のこり、頭痛などの二次症状を引き起こすこともあるのです。
 

奥歯や首の痛みと噛み合わせ関連性


奥歯から首にかけて痛いという症状の裏には、噛み合わせの問題が関係していることもあります。一見見逃されやすいこの要因は、顎関節や筋肉、さらには神経のバランスにまで影響を及ぼします。

以下に、噛み合わせの不具合が引き起こす代表的な影響を紹介します。

顎関節への負担

理想的な噛み合わせでは、上下の歯が均等に接触することが望まれます。しかし、奥歯の早期接触があると、咀嚼時に一部の歯に過度な圧力がかかります。この「早期接触」は、てこの原理のように働き、顎の関節に大きな負担を与えます。

その結果、顎関節内の関節円盤がずれてしまい、「カクカク鳴る」「口が開きづらい」といった顎関節症状が現れます。

これらは、奥歯の痛みだけでなく、顎関節やその周囲の筋肉、さらには首への放散痛につながることもあるため、適切な診断と治療が重要です。

筋肉の緊張

噛み合わせのズレによって顎関節が不安定になると、それを補おうとして咀嚼筋や首の筋肉が無意識に緊張し続けるようになります。

特に側頭筋、咬筋、胸鎖乳突筋などは噛み合わせと密接に関係し、緊張が続くことで炎症や筋肉痛、重だるさを感じる原因になります。

さらに、顎関節の不安定さを周囲の筋肉が代償的に支えようとすると、過度な負荷がかかり、筋肉が肥大・炎症を起こすこともあります。この炎症が波及し、首や肩など広範囲に痛みを拡大させるケースもあるため注意が必要です。

こうした筋緊張が慢性化すると、痛みは広範囲に広がり、奥歯の違和感だけでなく、こめかみや首の後ろ、肩こりとして自覚されることもあります。

姿勢の悪化

噛み合わせの不良は、全身の姿勢にも影響を与えます。たとえば奥歯の片側だけで咀嚼する癖があると、顎の動きが偏り、体全体のバランスを崩します。すると、首や肩にかかる負荷が増え、筋肉の緊張や血行不良を招きます。

また、姿勢の悪化はさらに顎関節や咬筋に負担をかけ、悪循環を生むため、噛み合わせの調整と同時に姿勢改善への意識も重要です。

神経へ影響

噛み合わせの不調は、やがて神経にも影響を及ぼすことがあります。特に顔や口周辺の感覚を司る三叉神経や顔面神経が、筋肉の緊張や顎関節の炎症によって圧迫されると、神経経路に沿って痛みが広がる関連痛が出現します。

このような神経性の痛みは、奥歯の局所的な違和感から首や肩、頭にまで広がりやすく、「奥歯から首にかけて痛いのに原因が見当たらない」と感じるケースも少なくありません。

神経の関与が疑われる場合は、早期に専門医を受診することが望まれます。
 

何科を受診するべき?原因別の対処法


「奥歯から首にかけて痛い」と感じるとき、その原因はさまざまで、適切な診療科を見極めることが重要です。誤った科を受診してしまうと、正しい診断や治療にたどり着くまでに時間がかかることもあります。

ここでは、奥歯から首にかけて痛いときに考えられる原因ごとに、受診すべき科や対処法を整理して解説します。

虫歯や歯周病

最も一般的な奥歯から首にかけて痛い原因は、虫歯や歯周病によるものです。

虫歯が進行して神経に達すると鋭い痛みが生じ、また歯周病の炎症が広がることで歯を支える骨や周辺の組織にまで影響が及びます。これが首にかけての違和感や鈍痛につながることもあります。

このような場合は、歯科を受診してください。歯科ではレントゲンや歯周ポケットの検査などを通じて、虫歯の進行度や歯周組織の状態を評価し、必要に応じて根管治療やスケーリング、薬物療法などが行われます。

親知らずの炎症

親知らずが斜めに生えていたり、歯ぐきの中に埋まっていたりすると、周囲の歯肉に炎症を起こし、腫れや痛みが奥歯から首にかけて広がることがあります。この場合も歯科、特に口腔外科を標榜している歯科医院が適切です。

親知らずの状態によっては抜歯が必要となるため、歯科用CTなどを備えている施設での診断が推奨されます。

顎関節症

口を開け閉めするときにカクカク音が鳴る、口が開きづらい、顎がだるい・痛いといった症状がある場合は、顎関節症の可能性があります。これは噛み合わせの不良やストレスによる筋緊張などが関与しており、放置すると首や肩まで痛みが広がることもあります。

対応可能な診療科は歯科(特に顎関節治療に対応している医院)のほか、口腔外科、などです。

顎関節症は、多くの場合、噛み合わせの異常が深く関わっています。 症状を正しく見極めるには、噛み合わせの知識と技術を持つ歯科医師による初期診断がおすすめです。

上顎洞炎

奥歯の上方に位置する上顎洞に炎症が生じると、副鼻腔炎(上顎洞炎)として痛みが現れ、奥歯や頬、目の下、さらには首まで鈍痛が広がることがあります。

上顎洞炎は虫歯や歯周病、不完全な根幹治療(歯の神経治療)、抜歯やインプラント治療などが原因で起こることがありますので、その場合には歯科での受診が適しています。

また、風邪の後や鼻づまりとともに痛みがある場合は、耳鼻咽喉科の受診が適しています。

耳鼻咽喉科ではCTや内視鏡を用いて副鼻腔の状態を確認し、抗菌薬や鼻洗浄、必要に応じて手術的治療を提案されることがあります。

その他のが原因の場合

「奥歯から首にかけて痛い」に該当する痛みでも、歯や副鼻腔に異常がない場合、神経痛・リンパ節の腫れ・ストレスによる筋緊張といった全身的な要因が隠れていることがあります。

こうした原因が疑われるときは、内科・神経内科・整形外科など、より総合的な視点での診察が必要になります。

特にしこりがある、発熱を伴う、片側だけが痛いなどの症状がある場合は、内科や耳鼻科で早めにチェックを受けるようにしましょう。

まとめ

奥歯から首にかけて痛い場合、その背景には虫歯や歯周病、親知らずの炎症、噛み合わせの不調など口腔内の問題に加え、神経痛や副鼻腔炎、ストレスといった全身的な要因が潜んでいる場合もあります。

痛みの出方や位置、あわせて現れる症状によって、受診すべき診療科が異なる点も見落とせません。自己判断で様子を見るのではなく、違和感が続くようであれば早めに専門機関へ相談することが大切です。

なかでも、奥歯が早期に接触することで生じる噛み合わせの問題は、顎の関節や筋肉だけでなく、首まわりや神経系にも影響を及ぼす可能性があります。軽視せず、慎重な対応が求められます。

まずは歯科での丁寧な診察を受け、奥歯から首にかけて痛い原因を明確にすることが、的確な治療への第一歩となるでしょう。


この記事を書いた人

嶋倉史剛
◆経歴
2000年 明海大学歯学部 卒業
2000年~2006年 明海大学病院歯周病科 勤務
2012年9月 あらやしき歯科医院 開業

◆所属・資格
IPSG包括歯科医療研究会 副会長
明海大学歯周病学分野同門会
日本総合口腔医療学会 口腔総合医認定医 常任理事
オーラルビューティーフード協会 理事
日本医歯薬専門学校非常勤講師
日本顎咬合学会 かみ合わせ認定医

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