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歯科から予防するタンパク質低栄養とサルコペニア肥満 ー歯科医療が健康寿命を延伸させるー       あらやしき歯科医院

何でも噛める状態と嚥下機能は、全身の健康を保つうえで、最も重要なポイントとなります。
実は、栄養不足・低栄養は、誰にでも起こる可能性があるんです!
低栄養には「カロリー低栄養」と「たんぱく質低栄養」があります。
 
カロリー低栄養は、飢餓状態です。低血糖になるとグルコースセンサーが「食べなさい」という信号を出すので、食べ物があふれる日本では起こりにくい栄養失調です。
 
たんぱく質低栄養は、咀嚼力や嚥下機能が低下することで起こります。先進国の栄養失調は「たんぱく質不足」のことです。
 
たんぱく質低栄養になると、
・  赤血球を作る材料の減少:貧血
・  筋肉や骨の減少に伴う運動機能の低下:転倒→骨折/ロコモ・疲れやすい
・  タンパク質不足による皮膚の異常:浮腫・褥瘡
・  免疫力の低下による感染症:肺炎・結核・日和見感染
さらには、
・  体力低下の悪循環による疾病の悪化
・  血管を作る材料が少ないことによる脳出血のリスク上昇
・  生活自立度の低下に伴う要介護の必要性上昇
などが起こり、快適で当たり前の日常生活をおびやかします。
タンパク質は、筋肉、内臓や骨などの身体をつくり、維持するうえで欠かせない栄養素です。
 
咀嚼力・嚥下機能と栄養摂取
歯が痛い・歯の本数が減ってしまった・入れ歯が合わない…という状態だと、食品多様性が低下します。噛めない・食べられない食品が増えて、噛まずに飲み込める柔らかい食品ばかり食べるようになってしまいます。
H25 sosyaku health nutrition.jpgH25 ennge health nutrition.jpg最も手軽に摂取できる柔らかい食品は炭水化物です。炭水化物過多になって、タンパク質が不足します。炭水化物は単なるエネルギーで、タンパク質、脂質、ビタミンやミネラルのような欠乏症はありません。成長期の子供は多量のエネルギー多量の炭水化物が必要ですが、大人はタンパク質と脂質を中心に1日の必要エネルギーを摂取し、不足した分を炭水化物で補うのが基本です。
 
うどんやおかゆは咬まずに飲めます。噛めない・食が細くなったと言って、おにぎりや菓子パン、うどんやスパゲッティ、マッシュしたポテトやおかゆ、ばっかりを食べていては、まずいことになります。エネルギーは過剰摂取して太っている(メタボ)。だけど、たんぱく質低栄養で栄養失調状態(サルコペニア肥満)。ということになってしまいます。
サルコペニア肥満.jpg「サルコペニア肥満」は、サルコペニアのみ、または肥満のみの状態と比べて生活習慣病と運動器疾患リスクが高いことが明らかとなっています(高血圧リスク:男性1.7倍、女性2.3倍・低体力リスク:男性3.0倍、女性5.9倍高い)。ロコモティブシンドロームや要介護になってから何かに取り組み始めたのでは遅すぎると思います。
 
歯が悪い・歯が少ない状態や口腔周囲筋の衰えによる嚥下機能の低下は、先進国の栄養失調を招き、QOL(クオリティ オブ ライフ)が著しく低下します。
 
健康で快適な当たり前の生活を維持するためには、
・  そもそも歯を失わないように、歯科治療を受けて予防歯科を継続する
・  歯を失ってしまったら、何でも噛めるしっかりとした入れ歯を作って食品多様性を増加させる
・  口腔周囲筋のトレーニングを継続して、嚥下機能を向上・維持させる
ということを日常的に意識することが、本当に重要です!
 
全身の健康を増進・向上及び維持していくためには、歯科医療/口腔保健リテラシーが最重要です!
 
年齢とともに一日に必要とされるエネルギー量は減少しますが、筋肉量や骨量を保ち、健康を維持するためには、高齢者でも多くの栄養素を必要としています。
eiyousyoyouryouhikaku.jpg20歳と70歳の一日の栄養所要量を比較すると、一日に必要とされる総エネルギー量は減少しますが、タンパク質は筋肉(内臓を含む)や骨量を保ち健康を維持するために、同量を必要とします。
年齢とともに主食は減らし、主菜は若い時と同様に口にする必要があるのです。




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ドイツ式入れ歯に関する出版のお知らせ


8月21日に株式会社みらいパブリッシングより本を出版することになりました!
 
タイトルは『入れ歯の悩みが一生消える-ドイツ式テレスコープシステム-』です。
 
本を出版するというのは非常に大変な作業ですね。
自分の経験からドイツ式入れ歯を言語化し、患者さんとの実体験を足し、試行錯誤しながら文章にしていきます。なので、構想から約2年、実際に執筆を始めてから1年半というかなりの時間がかかってしまいました。
 
とにかく文章を書くことに慣れていないため、診療の合間や仕事が終わってからの時間に調べ物をしたり執筆したりするのはとても大変でした。
 
今年は新型コロナの緊急事態宣言によって、学会発表が無くなり、講師を務める予定だったセミナーが延期になりました。そのおかげで、学会発表やセミナーの原稿を作る時間が無くなり、この本に専念することができました。今回の騒動がなければ、まだまだ執筆を終えられていなかったかもしれません。
 
内容は -ドイツ式テレスコープシステム- というと、なんだか難しく、とっつきにくいように感じるかもしれませんが、日ごろから患者さんに説明しているような内容を中心に、さらには治療の実例を交えて、歯の悩みやお口のトラブルの解消につながることを願って、なるべくわかりやすく書きました。
 
読んでみたいと思われたら、ぜひ以下の画像をクリックしてAmazonでお買い求めください。そして感想をお寄せいただけましたらうれしいです。
もっと本の内容を知りたい、あるいは、プレゼントに興味あると思われた方は、こちらからお願いします。(入れ歯の悩みが一生消える〜ドイツ式テレスコープシステム〜/ヨミトク

公式のフェイスブックでも情報を発信しています。
 
よろしくお願いします。


むし歯で死んじゃう!? またまた、むし歯くらいでオーバーな・・・

お口の中は、もともと、様々な種類の細菌がたくさん住んでいるところです。
むし歯は、主にミュータンス菌(Streptococcus mutans)という名前の細菌が原因となります。
decay001.jpgdecay002.jpgdecay003.jpg

むし歯が進行すると“歯髄”と呼ばれる歯の中の神経や血管が入っている組織にまで、細菌が侵入してしまいます。さらにその先、お口の細菌が歯の内側を通って歯の根の先から体内に入り込み、あごの骨の骨髄炎を起こしたり、血管を介して全身に拡散していくことで敗血症、心内膜炎や様々な病気の原因となったりするのです。
 
新撰組・二番隊隊長 永倉新八の死と虫歯の関係
池田屋事件や鳥羽伏見の戦いなどで活躍し、剣の腕は「一に永倉、二に沖田、三に斎藤」と言われ、新撰組の幹部で幕末の剣士である永倉新八は、、、大正4年(享年77)にお亡くなりになりましたが、、、なんと、虫歯を原因とする骨膜炎、敗血症によって死亡したのです。
 
・・・昔はそういうこともあったかもしれないけど、今はそんな時代じゃないでしょ?と思うかもしれません。しかし、近年でも、
 
18歳女性、むし歯を放置して死亡
これは2年前のイタリアでの出来事です。シチリア島、パレルモの18歳の女性が体の異常を訴え病院に運ばれました。それから1週間後、彼女の容体はさらに悪化し、とうとう息を引き取りました。肺炎と敗血症(多臓器不全に陥ります)を起こしたことが死因となったのですが、そもそもの原因は、長い間虫歯を放置していたことによる歯の炎症によるものでした。
http://www.thelocal.it/20140211/italian-teen-too-broke-to-pay-dentist-dies
 
このように直接的に死と結びつくことは、珍しい出来事かもしれません。しかし、むし歯は『死因』とされないだけで、多くの死に至る病気と関係しています。
 
むし歯や歯周病によってお口の細菌が血管内に入ることを歯原性菌血症と言います。
その歯原性菌血症が原因で『アテロームプラークによる動脈硬化症』や『感染性心内膜症』などが発症することがわかっています。
血管内にプラークが溜まっていって、心筋梗塞や脳梗塞を起こします。
『感染性心内膜症』は心臓の弁に細菌の塊(プラーク)がくっついてしまう病気です。直接、心臓の筋肉に炎症を起こしてダメージを与えてしまいますし、プラークがはがれると血管を詰まらせて脳梗塞を起こしてしまいます。
Iwai, Takehisa. "Periodontal bacteremia and various vascular diseases."Journal of periodontal research 44.6 (2009): 689-694.
Lockhart, Peter B., et al. "Bacteremia associated with toothbrushing and dental extraction." Circulation 117.24 (2008): 3118-3125.
 
日本人の死因の割合の1位から4位である ガン ・ 心疾患 ・ 肺炎 ・ 脳血管疾患は、お口の中の細菌が関係していることがわかってきています。
 
日本でも「痛い」とか「怖い」という理由で虫歯を放置しているという人の話を聞くことがありますが、むし歯の放置は確実にあなたの寿命を短くしてしまうと言えるでしょう。





じつは「命に係わる」病気―歯周病

全身的な健康とお口の健康は密接につながっています
お口の健康状態に気を配らないということは、くさい口臭を放つだけでなく、ガン、心臓病、脳卒中、糖尿病やその他のさまざまな病気になる可能性が高くなります。
oral_health_for_total_health.jpgお口の健康状態が悪いと心臓病を発症するリスクは2倍になります。脳卒中は3倍です。脳への影響でいえば、歯周病と歯の喪失が認知症のリスクを高めます。ガンや糖尿病のリスクも高まります。お口の細菌が口腔ガン・頭頸部ガンの原因になります。それだけではなく、ハーバード大学の研究で、肺ガンは36%、腎臓ガンは49%、すい臓ガンは54%それぞれのガンのリスクが増加するとわかりました。白血病などの血液のガンのリスクも30%増加し、その他ガン全体のリスクが14%高くなります。歯周病の人は糖尿病になるリスクが93%も上昇するという報告もあります。他にも、早産・低体重児出産、肺炎などの呼吸器疾患やEDなど……お口の健康への関心が低いと、本当にさまざまな全身の――深刻で人生を左右するような――病気を引き起こし、悪化させてしまいます。気付かないほどゆっくりと時間をかけて、これまで当たり前だったはずの日常生活を脅かすために忍び寄ります。
 
つまり、歯周病を放置して悪化させてしまうと、、、ガンになりやすい・血管が詰まって脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすい体になってしまいます。それは「命に係わる」ということにほかなりません。
 
病気になってから治療をすることは可能だと思います。しかし、病気の爪痕は確実に残ります。病気になる前の健康的で、なんの煩わしさも感じない、元々の当たり前の状態には決して戻ることはないでしょう。お口から全身の健康を守り、安心した毎日の生活を守るために適切な行動をしていきましょう。






一生、自分の歯で活き活きすごすための簡単なコツ

定期的メンテナンスプログラムの重要性
生涯歯数とメンテナンス.jpg
  • 「定期メンテナンス受診」:定期的に歯科医院でメンテナンスを行っている人は、ほとんど歯を失うことなく、80歳をこえても平均26本の歯が残っています。
  • 「歯磨き指導を受けた人」:ひとたび歯磨きの仕方を習ったからといって、歯科医院でメンテナンスを行わなければ、歯は失われていきます。
  • 「症状のある時だけ受診」:何か症状があった時だけ歯科医院に行く人は、40歳過ぎから徐々に歯を失い始め、80歳ではほとんど無くなってしまいます。

生涯にわたって自分の歯を維持し、十分な栄養を採って、食事を楽しんで、活き活きと日常を送るためには、歯科医院での定期的なメンテナンスが、とっても大切です。
 
生涯を美しい歯きれいな息素敵な笑顔ですごせるように、いつでも全力でサポートします!







江戸時代の健康観と歯

「人は歯をもって命とする故に、歯といふ文字をよわい(齢)ともよむ也」
 
Ekiken Kaibara.jpg
江戸時代に貝原(かいばら)益軒(えきけん)は『日本歳時記』という書物のなかに、このように記しています。貝原益軒という人物は、健康(養生)についての指南書・実用書である『養生訓』の著者で、福岡藩の儒学者であり医者(本草学者)でした。

この「人は歯をもって命とする故に、歯といふ文字をよわい(齢)ともよむ也」という言葉の意味は、『人にとって健康に生きていくためには、歯で食べ物をよく噛むことが何より重要で、だから「齢(よわい)」という字に「歯」が使われている』ということです。
この言葉は、歯は命に直結する大切なものであることを教えてくれています。昔から「よく噛んで食べなさい!」と言われてきたと思います。よく噛んで食べるということが体に良いということは、なんとなくイメージできるのではないでしょうか?
 
どうやら江戸の昔から、よく噛んで食べる生活習慣を身に着け、それを生涯維持していくことこそ、健康長寿の秘訣のようです。
 
さらに『養生訓』では、健康の3要素は運動・栄養・休息である。とし、飲酒の仕方や喫煙の害について説き、口腔衛生の重要性を唱えています。今も昔も変わらず健康の普遍の原理・原則。だけど、今も昔も実践が難しいということでしょうか?(真の健康を手に入れ、維持するための4つの要素参照)
ちなみに、江戸時代の平均寿命は大体40歳くらいといわれています。徳川将軍15名の享年は平均51歳です。貝原益軒は85歳(1630~1714年)。この『養生訓』を出版したのが83歳。亡くなる前年の84歳まで執筆活動を続けました。『養生訓』を自ら実践し(歯のグラつきや欠損もなく)、その生き方で健康長寿を全うする術を証明しています。
 
そんな貝原益軒の有名な格言「知って行わざるは、知らずに同じ」は、誰でも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
さらには「養生の要は、自らあざむくことを戒めて、よく忍ぶにあり」とも言っています。
 
先人の言葉、知恵や教えを生かして、健康な身体で長寿を目指したいですね!








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