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ブログ : コンセプト・その他 2ページ目

むし歯で死んじゃう!? またまた、むし歯くらいでオーバーな・・・

お口の中は、もともと、様々な種類の細菌がたくさん住んでいるところです。
むし歯は、主にミュータンス菌(Streptococcus mutans)という名前の細菌が原因となります。
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むし歯が進行すると“歯髄”と呼ばれる歯の中の神経や血管が入っている組織にまで、細菌が侵入してしまいます。さらにその先、お口の細菌が歯の内側を通って歯の根の先から体内に入り込み、あごの骨の骨髄炎を起こしたり、血管を介して全身に拡散していくことで敗血症、心内膜炎や様々な病気の原因となったりするのです。
 
新撰組・二番隊隊長 永倉新八の死と虫歯の関係
池田屋事件や鳥羽伏見の戦いなどで活躍し、剣の腕は「一に永倉、二に沖田、三に斎藤」と言われ、新撰組の幹部で幕末の剣士である永倉新八は、、、大正4年(享年77)にお亡くなりになりましたが、、、なんと、虫歯を原因とする骨膜炎、敗血症によって死亡したのです。
 
・・・昔はそういうこともあったかもしれないけど、今はそんな時代じゃないでしょ?と思うかもしれません。しかし、近年でも、
 
18歳女性、むし歯を放置して死亡
これは2年前のイタリアでの出来事です。シチリア島、パレルモの18歳の女性が体の異常を訴え病院に運ばれました。それから1週間後、彼女の容体はさらに悪化し、とうとう息を引き取りました。肺炎と敗血症(多臓器不全に陥ります)を起こしたことが死因となったのですが、そもそもの原因は、長い間虫歯を放置していたことによる歯の炎症によるものでした。
http://www.thelocal.it/20140211/italian-teen-too-broke-to-pay-dentist-dies
 
このように直接的に死と結びつくことは、珍しい出来事かもしれません。しかし、むし歯は『死因』とされないだけで、多くの死に至る病気と関係しています。
 
むし歯や歯周病によってお口の細菌が血管内に入ることを歯原性菌血症と言います。
その歯原性菌血症が原因で『アテロームプラークによる動脈硬化症』や『感染性心内膜症』などが発症することがわかっています。
血管内にプラークが溜まっていって、心筋梗塞や脳梗塞を起こします。
『感染性心内膜症』は心臓の弁に細菌の塊(プラーク)がくっついてしまう病気です。直接、心臓の筋肉に炎症を起こしてダメージを与えてしまいますし、プラークがはがれると血管を詰まらせて脳梗塞を起こしてしまいます。
Iwai, Takehisa. "Periodontal bacteremia and various vascular diseases."Journal of periodontal research 44.6 (2009): 689-694.
Lockhart, Peter B., et al. "Bacteremia associated with toothbrushing and dental extraction." Circulation 117.24 (2008): 3118-3125.
 
日本人の死因の割合の1位から4位である ガン ・ 心疾患 ・ 肺炎 ・ 脳血管疾患は、お口の中の細菌が関係していることがわかってきています。
 
日本でも「痛い」とか「怖い」という理由で虫歯を放置しているという人の話を聞くことがありますが、むし歯の放置は確実にあなたの寿命を短くしてしまうと言えるでしょう。





学会発表しました。

第34回日本顎咬合学会学術大会にて、学会発表を行いました。
 
今回のメインテーマは「新・顎咬合学が創る“健口”長寿」です。 
噛んで食べることで、脳の血流量が増加し、高度にネットワーク化した脳全体を活性化することが判明してきました。さらに咀嚼された食物が消化吸収により細胞レベルでの新陳代謝を促すことも重要です。そのためには生涯にわたる健康な咬合・咀嚼を育成・維持・再建・管理することが重要です。このことが生涯にわたる健康長寿の源になります。 
 
日本で最も大きな学会といっても過言ではないような学会で、日本全国から歯科関係者約4,600名が東京国際フォーラムに集結しました。
 
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発表前日に一緒にポスター発表したIPSGの先生方と
 
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展示されていた中にB.B.McCollumの「Gnathoscope」と「Gnatholator」がありました。稲葉先生が感心していたナソロジーの歴史。もう手に入らない文化遺産だとおっしゃっていました。
1920年代から顎運動の記録を取って治療に臨んでいたのに、現代ではフェイスボウトランスファーどころか咬合器さえ使っていない歯科医が多いという状況に改めて驚きました。
 
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学会発表に向けて、自身の日々の仕事の成果をまとめていると、新しい気づきがあったり様々な成書に目を通したり論文的考察によって、より深い勉強の機会になります。今回もたくさんの先生や技工士さんに興味を持っていただき、いろいろディスカッションさせていただいてとても励みになりました。
ありがとうございました。
 
 





お口の疾患の発症と予防に関係する食事と栄養 ―歯科栄養学―DENTAL NUTRITION

栄養学は、全身の健康と密接に関係する重要な要因の一つです。十分な栄養を摂取し、バランスのとれた健康的な食事を実践するためには、しっかりと噛めるお口の状態が必須となります。病院や施設で栄養士の栄養指導を受けたとしても、十分な咀嚼機能を保っていなければ、絵に描いた餅になってしまいます。
健康を保持・増進するための栄養学の実践には、
・十分な栄養の知識
・しっかり噛めるお口
この2つの要素が不可欠です。
「しっかり噛めるお口」への機能回復、歯科補綴学的なアプローチは、他の様々なページを参照してください。
ここでは、「十分な栄養の知識」を元に「しっかり噛めるお口」を保持・増進するために、世界保健機関(WHO)がまとめている、お口の疾患を予防し、歯を守るための栄養学の知見について紹介します。

口腔疾患の病因と予防における食事と栄養の役割
1. タンパク質低栄養は、歯周病を悪化させる。
2. 抗酸化物質(ビタミンC, β-カロチンとビタミンE)は、歯周病の予防因子である。
3. ビタミンB群欠乏症は、舌炎、口唇炎と口角炎の発症に関与する。
4. 低栄養は、壊疽性口内炎の危険因子である。
5. ビタミンCは、口腔がんの予防因子である。
6. やけどするほど熱い飲食物と炭火焼の食品は、口腔がんの危険因子である。
7. 全粒穀物、野菜とくだもの(特に柑橘類)は、口腔がんの予防因子である。
8. ビタミンA, ビタミンDおよびタンパク質の欠乏は、エナメル質減形成と唾液腺萎縮の危険因子である。
9. クエン酸、リン酸、リンゴ酸、酒石酸、蓚酸および炭酸など食品あるいは飲料中の酸は、酸蝕症の危険因子である。
10. 砂糖は、齲蝕症(虫歯)の最大の危険因子である。
11. フッ化物(フッ素)は、間違いなく虫歯を減少させる予防因子である。
12. チーズと牛乳(カルシウム、リンとカゼイン)は、虫歯の予防因子である。
13. 全粒穀物、ピーナッツ、硬いチーズとチューインガム(砂糖なし)は、虫歯の予防因子である。

Moynihan, Paula J. "The role of diet and nutrition in the etiology and prevention of oral diseases." Bulletin of the World Health Organization 83.9 (2005): 694-699.

大きな病気にかからない人生を歩むため、よりよい健康状態を目指すため、には
―栄養・運動・休養・歯の健康―
に留意する必要があります。これらの要素はそれぞれリンクしています。栄養の観点からお口の健康についても考えてみましょう。
 
ちなみに、砂糖を含む糖類の単独摂取は肥満と虫歯の危険因子である。ということで、
世界保健機関(WHO)は、生活習慣病予防の観点から、糖類単独摂取によるエネルギー量を総エネルギー摂取量の5%以下にすることを推奨しています。
 
ちょっとだけでも、生活習慣を見直す機会にしてみてくださいね。






IPSG Scientific Meeting2015~学術大会~にて、講演発表させていただきました

今回のテーマは「The LEGEND」。ドイツの本物の歯科治療技術を日本に持ち帰り、言葉だけでなく、実際に30年、40年と変わらず患者様の口腔内で機能し続けている義歯や治療を目の前で見せてくれる稲葉繁先生。現代の歯科治療の基礎である金属焼付けポーセレンを開発し、半世紀にわたって世界で活躍されている技工士の桑田正博先生。牧師で心の病気のカウンセラーでもある関根一夫先生。など、正に伝説の素晴らしい先生と共に講演登壇させていただいたことを、とても光栄に思います。
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会場は、日本歯科大学の九段ホールです。
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日々の治療を通じて得た知見をまとめて発表いたしました。
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日常臨床を未来の治療に役立てるために、向上心をもって勉強・活動していきたいと思います。
発表後、質問してくださったり、お声掛けいただいた多くの先生・技工士さんに、大変感謝しています。ありがとうございました。


IPSG学術大会の後は、毎年恒例の望年会(IPSGでは、忘年会ではなく、望む年の会と呼んでいます!)です。
会場はホテルエドモント。稲葉先生のあいさつもそこそこに、盛り上がりました。
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桑田先生にもアドバイスをしていただきました。
ありがとうございました。
 
すべては最善の治療を提供するために、それぞれの熱い思いがギュッと詰まったとても素晴らしい一日となりました。
 

医師・歯科医師・獣医師のための学会セミナー

インプラントセミナー
―獣医師・歯科医師のための理論と実技―
日本総合口腔医療学会のインプラントの研修会に参加してきました。
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当院では現在、インプラント埋入後の管理の問題から、インプラント治療は行っておりません(インプラントとは参照)。しかし「行わないから、勉強しない」という姿勢ではいけないと思っています。医学が進歩し、現在私が感じているインプラント治療に関する懸案事項が、いつか解消されるかもしれません。なので、インプラントセミナーに参加してきました。
 
今回のセミナーはインプラント入門セミナーです。しかし、日本総合口腔医療学会は、医師・歯科医師・獣医師や医療従事者が幅広く参加する学会です。
 
インプラント治療は大学病院時代にたくさん勉強し、経験してきました。
 
救命救急医による外科処置を行う際の全身管理の注意点の講義や最新の抗生物質の考え方・使用方法など、新鮮な情報を得ることができました。インプラント施術方法やそこに関係する解剖学は、私には再確認といった感じでした。
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医科と歯科の先生が講演する奥行きのあるセミナーだったと思います。
そして、今回、獣医師の先生が大勢参加していました。
 
獣医師の世界、ペットにもインプラント処置を行う時代がすぐそこまで来ているようです。折れて失ってしまった犬歯を取り戻す。。。といった感じでしょうか?
 
歯科ではインプラント手術や歯周形成外科処置などで骨造成材や骨補てん材を用いる機会がありますが、獣医師さんも骨補てん材にとても興味があるようでした。また、PMTCのニーズも高いようです。
 
いつもながら獣医師の皆様には敬服いたします。獣医師は、眼科、耳鼻科、内科に外科や麻酔科など、すべてを一人でカバーしています。さらには、主訴を伝えられない患者の治療をしながら、親(飼い主)と円滑なコミュニケーションをとらなければならないという意味で、小児科の要素もあることでしょう。それに歯科までも…本当にすごいことだと思います。
 
そんな幅広い知識を持ち、勉強熱心な先生たちと一緒に勉強し、貴重な情報交換ができるユニークで様々な知識が得られるセミナーでした。
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ブレーンベース社のマイティス アローインプラント システム
久しぶりの実習でしたが、感覚は衰えないものだと実感してしまいました。
大変有意義なセミナーでしたが、インプラント治療に対する懸念が払しょくされたわけではないので、当院でインプラントを扱うのは、まだ先のことになるでしょう。引き続き情報収集したいと思います。

その歯科治療用器具はすみずみまで滅菌されていますか?

滅菌とは、「病原体・非病原体を問わずすべての微生物を死滅、または除去すること」ですが・・・。
皆様に、安心して歯科医療を受けてもらうための最も重要な条件のひとつに、徹底した衛生管理があげられると思います。
しかし、従来の一般的な歯科用オートクレーブ滅菌器(高圧蒸気滅菌器)はクラスNです。歯科用器具は中部が空洞のものが多いのですが、クラスN滅菌器では器具の表面だけしか滅菌できません。つまり、中空のものは内側を滅菌できないのです。切削器具やバキュームチップなどは中空です。見た目は清潔でも細菌やウイルスが死滅できていない歯科用器具を使用されたら、水などと一緒にお口に中に菌が入ってくる可能性があります。そう考えたら非常に恐ろしいと思いませんか?
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中空・多孔な器具のすみずみまで滅菌できる最も安全性の高い「世界基準」の高圧蒸気滅菌器
当院で採用している「リサ」は、小型滅菌器のヨーロッパ基準(EN13060)で最も厳しい基準をクリアしたクラスBオートクレーブです。
クラスBオートクレーブは、「あらゆる種類の被滅菌物を安全に滅菌することができる」とされています。
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  • 真空と蒸気の注入を交互に繰り返すことにより、残留空気を抜き、高温蒸気を細部まで行き渡らせます
  • 乾燥工程は、約80℃の温度で行われるため、タービンやコントラアングルといったハンドピースを痛めることなく滅菌でき、完全に乾燥した状態で終了します
 
イタリアのW&Hステリライゼーション社のクラスBオートクレーブ「リサ」は、患者様にも医院にも、より清潔で安全な医療環境をもたらしてくれる、医科の基準に準拠した小型高圧蒸気滅菌器です。
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さすが、ヨーロッパは安全に対するコンセプトがシッカリしています。
W&H(Dentalwerk Burmoos)社は、1890年創立の世界的な歯科用製品メーカーです。







江戸時代の健康観と歯

「人は歯をもって命とする故に、歯といふ文字をよわい(齢)ともよむ也」
 
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江戸時代に貝原(かいばら)益軒(えきけん)は『日本歳時記』という書物のなかに、このように記しています。貝原益軒という人物は、健康(養生)についての指南書・実用書である『養生訓』の著者で、福岡藩の儒学者であり医者(本草学者)でした。

この「人は歯をもって命とする故に、歯といふ文字をよわい(齢)ともよむ也」という言葉の意味は、『人にとって健康に生きていくためには、歯で食べ物をよく噛むことが何より重要で、だから「齢(よわい)」という字に「歯」が使われている』ということです。
この言葉は、歯は命に直結する大切なものであることを教えてくれています。昔から「よく噛んで食べなさい!」と言われてきたと思います。よく噛んで食べるということが体に良いということは、なんとなくイメージできるのではないでしょうか?
 
どうやら江戸の昔から、よく噛んで食べる生活習慣を身に着け、それを生涯維持していくことこそ、健康長寿の秘訣のようです。
 
さらに『養生訓』では、健康の3要素は運動・栄養・休息である。とし、飲酒の仕方や喫煙の害について説き、口腔衛生の重要性を唱えています。今も昔も変わらず健康の普遍の原理・原則。だけど、今も昔も実践が難しいということでしょうか?(真の健康を手に入れ、維持するための4つの要素参照)
ちなみに、江戸時代の平均寿命は大体40歳くらいといわれています。徳川将軍15名の享年は平均51歳です。貝原益軒は85歳(1630~1714年)。この『養生訓』を出版したのが83歳。亡くなる前年の84歳まで執筆活動を続けました。『養生訓』を自ら実践し(歯のグラつきや欠損もなく)、その生き方で健康長寿を全うする術を証明しています。
 
そんな貝原益軒の有名な格言「知って行わざるは、知らずに同じ」は、誰でも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
さらには「養生の要は、自らあざむくことを戒めて、よく忍ぶにあり」とも言っています。
 
先人の言葉、知恵や教えを生かして、健康な身体で長寿を目指したいですね!







ドイツの最先端歯科医療

カボデンタルシステムズ/ KaVo Dental Systemsドイツ本社のH.W.ラング(Hans Walter Lang)氏の講演

Lang 001.jpgH.W.ラング氏は、かみ合わせ治療に欠かせないカボの咬合器(プロターevo)やアルクスディグマ2などのプロターシステム開発者です。今回ラング氏は、大阪と東京のカボジャパンで講演するために来日していましたが、その合間にIPSG研修室で講演してくれました。IPSG代表の稲葉先生とラング氏は、20年以上の付き合いがある旧知の仲です。稲葉先生はプロター咬合器の開発にも携わっていて、稲葉先生が書いた最初のプロター咬合器のマニュアルを見せていただきました。そんな稲葉先生のはからいで、今回特別にIPSGV.I.P.メンバーのためだけの貴重な講演会を開いていただきました。
(IPSG/包括歯科医療研究会については あらやしき歯科医院開院までの道のり 及び 休診日(木)の過ごし方 -IPSGと私- を参照してください)
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今回のラング氏の来日目的は、これから世に送り出される『バーチャルアーティキュレーター』という次世代の咬合器の解説のためです。
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『バーチャルアーティキュレーター』は、あごの運動の記録と模型データをもとに、患者さんのかみ合わせを3次元データで正確に再現します。咬み合わせの再現性がより正確に、視覚的にわかりやすくなり、より良いかぶせもの・詰めものができるようになっていくことでしょう。
期待の新技術・仮想咬合器モジュールについて説明していただきました。
とても有意義な研修会でした。今回の得たものを多くの患者さんに還元できるように頑張りたいと思います。
 
そして、研修会の後は懇親会。ラング氏の車はマツダでカメラはニコンなど、日本製品が好きなことなどを話していただいたり、所有するプレジャーボートを見せてもらったり、とても楽しく、あっという間に時間が過ぎました。
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ドイツの歯科医療と生活に少しだけ触れることができた貴重な一日でした。

真の健康を手に入れ、維持するための4つの要素

健康の保持・増進に欠かせない基本要素は「栄養」「運動」「休養」と「歯の健康」です
 
あなたの考える「健康」とはどのようなものでしょうか?
WHO(世界保健機関)の健康の定義は「健康とは単に病気や虚弱ではないということだけではなく、身体、精神及び社会的に良好な状態を指す」です。どうやら健康という言葉には「病気か?病気じゃないか?ということもあるけれど、家族、職場・学校などコミュニティーの人間関係が良好で、精神的に安定していて、日常生活を営むために必要な体力が十分にある」という意味も含まれているようです。
そこで日本では、
国民の健康の増進を形成する基本要素となる
1. 栄養 2. 運動 3. 休養 4. 飲酒 5. 喫煙 6. 歯の健康
に関する生活習慣の改善が重要である。(健康日本21)
としています。
4.と5.お酒とタバコは嗜好品です。関係ない人も多いので、今回は全員が共通して取り組まなければならない「栄養」「運動」「休養」と「歯の健康」にフォーカスしたいと思います。
 
栄養・食生活
「栄養」というと栄養失調を思い描くかもしれませんが、現代社会で問題になっているのは、カロリーの過剰摂取・偏食傾向による低栄養です。
子どもの健やかな発育は、子どもの適正体重を維持するために、朝・昼・夕の3食を必ず食べることに気をつけて食事をする、共食・子どもが1人で食事をする機会をなくす、といった生活習慣の獲得が重要です。生活機能(生きる力)を獲得し自立するためには、リズムを身につけることが肝要です。
高齢期の適切な栄養は、生活の質の向上と身体機能を維持し生活機能の自立を確保する上で、極めて重要です。高齢者の低栄養が、要介護及び総死亡に対する独立したリスク要因となっています。したがって、高齢者の低栄養状態を予防・改善し、適切な栄養状態を確保することができれば、健康余命の延伸が期待できます。今後必要となる低栄養対策としては、まず、高齢期に不足しがちなタンパク質や脂質は十分に摂り、多様な食品摂取に留意することといった、高齢期の正しい食のあり方を実践しなければなりません。
 
運動・身体活動
身体活動量・運動量の多い人は、不活発な人と比較して、循環器疾患やがんなどの生活習慣病の発症リスクが低いことがわかっています。WHOでは、高血圧(13%)、喫煙(9%)、高血糖(6%)に次いで、身体不活動(6%)を全世界の死亡に対する危険因子の第4位に上げています。日本では、身体活動・運動の不足は「喫煙」、「高血圧」に次いで生活習慣病による死亡の3番目の危険因子です。また、身体活動・運動は生活習慣病の発症予防だけでなく、高齢者の認知機能や運動器機能の低下などの社会生活機能の低下と関係することもわかってきました。
子どもは、運動やスポーツ習慣といった健やかな生活習慣を幼少時から身につけ、生活習慣病予防の基盤を固め、生涯にわたって健康な生活習慣を継続できるようにしましょう。
高齢者も運動・スポーツ習慣を身につけ、維持することが理想です。理想だけどむずかしい…そこで、歩行(歩数・速度)に注目しましょう。
歩数は、比較的活発な身体活動の客観的な指標となります。歩数の不足や減少は、肥満や生活習慣病発症の危険因子であるだけでなく、高齢者の自立度低下や虚弱の危険因子であるなど、最も懸念すべき問題なので、早急に重点的な対策を実施する必要があるます。生活習慣病予防のために1日8,000 歩~10,000 歩(週23 メッツ・時*)以上の身体活動を行いましょう。
歩行速度が速い高齢者ほど生活機能を維持しやすく余命も長いことが知られています。歩
行速度は要介護状態に対する予知因子ともいえる機能です。歩く速度があるレベルよりも低下してしまうと、日常生活に不自由が生じ始めます。
このような運動・身体活動を抑制してしまう因子として、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)が問題視されています。
ロコモティブシンドローム(運動器症候群)とは、運動器の障害のために自立度が低下し、介護が必要となる危険性の高い状態をいいます。
 
休養
休養は、こころの健康を保ち、心身の疲労の回復と充実した人生をすごすための重要な要素の一つです。健康づくりのための休養には、「休む」ことと「養う」ことの二つの機能が含まれています。
「休」の要素は、主に、労働や活動などによって生じた心身の疲労を、安静や睡眠などで解消することで、疲労からの回復を図り、元の活力を持った状態に戻し、健康を保持するものです。一方「養」の要素は、明日に向かって英気を養うと言うように、主体的に自らの身体的、精神的、社会的な機能を高めることで、健康の潜在能力を高め、健康増進を促進するものです。つまり、健康づくりのための休養は、ただ単に身体を休めるというだけでなく、受動的な「休」の要素と能動的な「養」の要素から成る意味合いの広いものです。
睡眠不足は、疲労感をもたらし、情緒を不安定にし、適切な判断力を鈍らせ、事故のリスクを高めるなど、生活の質に大きく影響します。また、睡眠障害はこころの病気の一症状としてあらわれることも多く、再発や再燃リスクも高めます。さらには、睡眠不足や睡眠障害が肥満、高血圧、糖尿病の発症・悪化要因であること、心疾患や脳血管障害を引き起こし、ひいては死亡率の上昇をもたらすことも知られています。
 
歯・口腔の健康
なぜ、健康日本21では「歯の健康」を重要な要素に挙げていると思いますか?
歯・口腔の健康は、口から食べる喜び、話す楽しみを保つためにとても重要で、身体的な健康のみならず、精神的、社会的な健康にも大きく寄与します。歯の喪失による咀嚼機能や構音機能の低下は多面的な影響によって、最終的に生活の質に大きく関連します。
なぜなら、栄養・運動・休養は、歯の健康があってこそ、良好な状態を保てるからです。
 
栄養:口の中の状況が悪かったら、いくら内科医・管理栄養士の栄養指導を受けたとしても、十分に実行できません。歯並びが悪い・歯の本数が少ない・入れ歯が合わない・虫歯が痛いなど、しっかり噛めない・咀嚼できない状態だと、固い・食べ応えのある食品を避けて軟らかい食品に偏ってしまいます。(歯から予防するタンパク質低栄養とサルコペニア肥満参照
咀嚼は、食べ物を細かく噛み砕き、唾液とよく混ぜ合わせます。唾液にはアミラーゼという消化酵素、免疫物質(IgA)や抗菌物質(リゾチームなど)が含まれています。でんぷんの分解・消化を助け、上気道感染や食中毒などから体を守る役割も果たしています。
ほとんど噛まずに食べられる炭水化物中心の食事で、栄養バランスが崩れていませんか?また、しっかり食事をとっているようでも、十分に咀嚼できずに丸飲み状態では、胃腸に大きな負担をかけ、免疫力にも影響します。
咀嚼機能をはじめとする口腔機能は、生涯を通じて健やかな日常生活を送る上で、大きな役割を果たします。
 
運動:顎関節症で顎運動・咀嚼運動がきちんと行えない。ということもありますが、歯、特に下顎は、平衡感覚に関係します。わずかな咬み合わせのずれで首の筋肉のバランスが悪くなり、それに伴って身体の左右バランスも悪くなります。運動を行う上で基本となる頭部の位置固定が不安定になってしまいます。しっかり噛めなければ、食いしばって力を発揮することができません。
口の周りの筋肉の発達や正しい舌の運動は、発音・構音、顔の表情を整える、あるいは飲み込む機能を維持するために重要です。口の周囲の筋肉機能の低下は、口呼吸による免疫力の低下や誤嚥性肺炎のリスクを高めます。
また、歯周病は、ガン・心疾患・脳血管疾患・糖尿病…様々な生活習慣病を引き起こします。病気になれば運動どころではありません。さらには、関節リウマチを引き起こす原因のひとつになることがわかっています。関節リウマチになれば、運動機能を正常に保つことが困難になります。
 
休養:“歯が痛くて眠れない!”となれば、十分な睡眠・休養は望めません。あるいは、十分睡眠時間をとっているつもりでも、睡眠時無呼吸症候群で深い睡眠がとれず、休養になっていない。ということもあります。
脳内のお口の感覚や運動をつかさどる部分は、とても広い範囲を占めています。噛むこと・味わうことは、視覚(食卓の彩り)、嗅覚(香り)や会話などと共に脳の活性化につながります。咀嚼運動は、呼吸や歩行と同じ、代表的なリズム活動です。リズム活動によって、脳内にセロトニンという神経伝達物質が増えると、過度な興奮や不安を鎮めてストレスが緩和・解消され、安定した日中活動の支えになります。興奮した子どもを落ち着かせるには、リズム運動が効果的ですね。また、常に大きなプレッシャーを抱えるアスリートがガムを噛むという行為は、理にかなったストレスに打ち勝つための方策ですね。噛むこと・歯ぎしりは、ストレス対策に重要な役割を果たしています。
 
このように、歯・口腔の健康は、健康で質の高い生活を営む上で基礎的かつ重要な役割を果たしているのです。
「歯と口腔の健康」を軽視・ないがしろにしてしまっては、いくら「栄養・運動・休養」その他のどんな健康法に力を注いでも、目指す「健康」は遠のくばかりになってしまいかねません。
「サプリを飲んでいるから大丈夫」「走っているから大丈夫」「十分寝てるから大丈夫」本当にそうでしょうか?何か一つでは不十分です。全体のバランス、特に見過ごしがちな「歯の健康」が重要です。
健康増進に向けて、歯とお口の状態は常に変化しているということを考慮しつつ、そのときの状態に最適なケアを行うように心がけましょう。
 
メッツ・時*(健康づくりのための運動指針2006より抜粋)
身体活動の強さと量を表す単位として、身体活動の強さについては「メッツ」を用い、身体活動の量については「メッツ・時」を「エクササイズ」と呼ぶこととしました。
(1)「メッツ」(強さの単位)
 身体活動の強さを、安静時の何倍に相当するかで表す単位で、座って安静にしている状態が1メッツ、普通歩行が3メッツに相当します。
(2)「エクササイズ(Ex)」(=メッツ・時)(量の単位)
 身体活動の量を表す単位で、身体活動の強度(メッツ)に身体活動の実施時間(時)をかけたものです。より強い身体活動ほど短い時間で1エクササイズとなります。
(例)
 3メッツの身体活動を1時間行った場合:3メッツ×  1時間=3エクササイズ(メッツ・時)
 6メッツの身体活動を30分行った場合:6メッツ×1/2時間=3エクササイズ(メッツ・時)




休診日(木)の過ごし方 -IPSGと私-

実は、休診日の木曜日は、ほとんど、東京・秋葉原にある稲葉歯科医院に通っています。午前中は、稲葉 繁 先生が患者さんを治療しているところを臨床見学し、午後はIPSG研修室で研修/ディスカッションを受けています。
 
・・・・・・今のところなんだかわからないと思いますが、最後まで読んでもらえれば意味が分かります・・・・・・
 
『人生を変える方法は2つしかない』と言われます。
「ひとつは人との出会い」・「もうひとつは本との出会い」です。 
稲葉先生との出会いは、正に、私の人生を大きく変えることになりました。この出会いがないまま歯科医師人生を歩んでいることを想像すると、ゾッとするほど怖いです(あらやしき歯科医院開院までの道のり参照)。
 
IPSGと稲葉先生について
IPSGは、Interdisciplinary Practical Study Groupの頭文字で、包括歯科医療研究会というスタディ・グループです。元日本歯科大学教授 稲葉 繁先生による「医療には最善の方法が実行されるべきである」という信念のもと、1994年にドイツ・アルゴイ地方で開催された歯科研修で発足しました。稲葉先生が、海外で著名な先生から直接指導を受けた確かな一次情報と先生自身が培ってきた技術を日本の歯科医師に正しく広めるために活動しています。稲葉繁先生の咬合、補綴についての40年以上の豊富な長期症例は、確かな理論と技術の表れです。顎関節症テレスコープシステム総義歯口腔育成/リハビリテーションを4つの柱としています。IPSG発足20周年記念講演では、ドイツ・チュービンゲン大学歯学部長、Prof.Dr.H.Weberによる貴重な講義もありました。
 
稲葉先生は、大学病院で勤務・診療しているときに日本の歯科医療の根拠のなさや非科学的な治療法に疑問を抱き、歯科医療の源流を求めてドイツ・チュービンゲン大学に留学しました。そこで、シュルテ教授から体系的に構築された顎関節症の診断と治療について学び(夜遅くまで熱心に講義してくれたそうです)、ケルバー教授からドイツの補綴学(テレスコープシステム)を学びました。その後、日本に帰ってきてから今日まで、正統派テレスコープと包括歯科医療を実践し、広めています。
 
私はこれまでに様々な研修を受けてきましたが、包括的に患者さんを治療して結果を明示している先生は稲葉先生だけだと思います。世の中、根拠や結果についてよくわからないような内容の講義だったり、よく考えると筋の通らないような理論をかざしていたり、質問しても論点のすり替えではぐらかしたような答えしか出せなかったり・・・結局、患者さんの治療と結びつかない・結果をはっきりと示せない、そんな曖昧な講習会先生が多いという印象を持っています。しかし、稲葉先生は、筋道の通った論理と実際の患者さんの治療結果についてはっきりと示してくれます。講義では、たくさんの長期症例を示してくれます。実践デモコースでは、実際の患者さんを目の前で治療して治してみせます。こんなにはっきりと治療結果を明示する講習会・実習は、IPSG以外、ほとんど存在しないと思います。(あくまでも私の経験に元づく個人的な感想です)
IPSG logo.gifというわけで、私は今日に至る13年間IPSGで研鑽を積んでいます。現在、木曜日に稲葉先生の臨床見学と研修を受けることができるのは、IPSG VIP メンバーと呼ばれる、IPSGの研修/実習を全部受けて、なおかつ、稲葉先生に認められた全国でわずか22名の歯科医師・歯科技工士だけです。
 
臨床見学では、現在進行形で治療している患者さんはもちろん、入れ歯を作ってから20年・30年経過した今でも、当時と変わらずに機能している患者さんのメンテナンスを生で、直に見学させていただいています。30年以上たっても輝いて機能している入れ歯と共に先生と患者さんの歴史に触れられることは、とても感動的で貴重な経験です。現在進行形の治療の見学では、日常臨床のちょっとした――だけど深い――注意点やコツを教えてもらっています。どれだけ学んでも目からうろこが落ちることがたくさんあります(笑)。
研修/ディスカッションの時間では、(昔、学生時代に教科書で歴史的に学んだような)すでに他界している大家と呼ばれる先生達から稲葉先生が直接学んだ1次情報の貴重な資料から、過去の偉人の考えがどのような変遷を経て現在のこの治療に結びついているんだよ、とか、だからこの治療法は本物でそっちは一部を真似ただけでコンセプトが失われてるから偽物だよ、などの氾濫する情報の整理や最近のドイツを中心としたヨーロッパの歯科事情、教授の様々な臨床経験などを教えていただいたり、メンバーの各医院の患者さんの治療方針や入れ歯の設計などをディスカッションしたりしています。メンバー先生たちも熱くて経験豊富な先生ばかりなので、とても刺激的で勉強になります。
 
仕事が楽しい!
IPSGでの学びは、歯科医学・咬み合わせの重要性や歯科臨床の奥深さを知ることができますし、私達や患者さんに常に真摯に向き合って道を示してくれる稲葉先生にいつも感銘を受け、自分の歯科医師としての根幹を成しています。そして、そのような経験のすべてが『今、自分が一所懸命やっていることが、20年後30年後にこんなに素晴らしい結果と患者さんの笑顔につながるんだ』という思いになり「仕事が楽しくてしょうがない!」と、毎日感じています。
 
そんなわけで、木曜日は重要なレベルアップの日になっているので休診です。また、臨時休診もたびたびあって申し訳ありませんが、皆様に還元し貢献できるように邁進していきたいと思います。よろしくお願いいたします。


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